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石音インストラクターブログ

2016/03/26

囲碁, 長谷俊インストラクター

長谷インのグローバル囲碁旅行記~台湾編その9~

皆さんこんにちは。
最近、独学で気について学んでいる長谷インです。

アルファ碁が囲碁の未知を解明するのなら、別のアプローチで囲碁の可能性を広げようじゃないかと思う次第です。コンピューターに理論で対抗しても仕方ないですから、第六感を引き出して囲碁の感覚的な視野をさらに広げていきたいと思っています。
(本音はヒグマと戦う準備です。)

〜前回のあらすじ〜
勝負の3日目をようやく乗り越えることができた長谷イン。
予定では3日目までにサクサクっと取材を終わらせて、4日目からは観光するつもり
でした。今回の取材目的には「とある場所」も含まれているので、まだまだ囲碁取材
には時間が掛かりそうです。

台湾編その9「切腹できない侍」

4日目の朝を迎えました。
台湾に来てこれまで、一度として清々しい朝を迎えたことはありません。
前の晩はひたすら翻訳作業に明け暮れていました。
というのも、囲碁取材は個人的にはもうお腹いっぱいなんですね。
何のためかというと、昨日の名人児童棋院へのお礼文をしたためていたわけです。

もちろん海峰棋院にもお世話になりましたが、女の子が可愛かった、もとい皆さんに
すごく良くしてもらいましたから。
(この日は木曜日で、海峰棋院での手合い日だったこともあります。)
とにかくお礼だけはしておこう、そんな気持ちでいっぱいでした。

で、恒例の翻訳タイムですよ。
おそらく7、8時間はかかっていたと思います。
旅行先でそんなことしているアホは前代未聞です。

しかしこういうことは前もって準備できないわけで、端からスマートに旅行しようとも思っていません。

過密スケジュールで観光スポットを巡り、各地の名産を食べて回る。

そんなことより、そのとき必要なことを熱心に取り組むほうが性に合っています。
(ある意味、過密になっていますが。)

今回は今までとは違い、翻訳には特別な工夫がしてあります。

ふふふ、何だと思いますか?

なんと繁体字、日本語、英語の三か国語でお礼文を作りました。
いやー、我ながらナイスアイディアですよ。

昨日お話して思ったのは、翻訳機がそれほど役に立たないことです。
つまり正確にこちらの意図を伝えるのは難しいと言わざるを得ません。
ならば、3つのアプローチでこちらの想いを伝えるほかありません。

謝さんと大学生の女の子は日本語が分かりますし、英語は日本よりも台湾のほうが
習得率も高く流暢に話しています。そして簡単な文章にまとめてしまえば、
こちらの気持ちがストレートに伝わるはずです。

分かりやすい文章とそれぞれの整合性を求めた挙句が、7、8時間の対価
だったわけです。まあ、すこぶる寝不足ですが、やり切った感はありますね。
あとはノートにちゃんと清書すれば完璧です。
(このあとノートを買うため文房具店を探すのにまた一苦労)

ただ今回の囲碁取材の目的はまだ完遂していません。
この機に台湾の囲碁教室のとある秘密を調べてくるように密命を受けています。
それは「対局をさせずに囲碁を教えるという取組み」への取材です。

それをビジネスにしていく動きがあり、すでに中国棋院が権利を買い取っている
という噂です。

“そんな大事な情報を聞き出せるわけないでしょ”と思ってましたが、
密命を受けたので渋々調べに行きました。

事前の席亭からの台湾プチ情報では、「応昌期基金」(財団法人応昌期囲棋教育基金会)
にその秘密があるらしいのです。

さっそく未知の指導法を取材に「応昌期基金」へ!

って、長谷インともあろうアホが簡単に目的地へ着くはずないでしょ?
迷いましたよ、ここでも散々。
一応断っておかないと、文章ではサクサク着きましたって錯覚しますからね。
もはやデフォ(当たり前)ですから、ここら辺の心理状態は割愛します。

さてさて、着きましたよ、どうにかこうにか。
受付には年配のおばさんが一人でいました。
例によって挨拶文を渡しましたが、もう一つ心強い武器を持っていました。
それは海峰棋院でお世話になった楊さんの名刺です。

応昌期基金へ行きたい旨を伝えたら、名刺を見せれば大丈夫だからと言ってくれました。
受付の女性がおそらく応昌期基金の楊さん(同性)だろうと思い、名刺を挨拶文と
一緒に渡しました。

しかし、まあ見た感じ営業している様子ではありません。
今日は休みかな、と思いながらいろいろと聞いてみました。

ちなみに応昌期基金の楊さんは日本語がまったく喋れません。
それでもさすがに場数を踏んできた長谷インは自信を持ってやり取りをします。
こういうとき、無駄とも思える翻訳作業が役に立ってくるわけです。
しっかり喋ってキーワードだけ伝われば、ちゃんと意思疎通ができます。

カレンダーを指して週6日で営業していて、日曜日が休みという旨を聞き取ることが
できました。とはいっても、今日は木曜日のお昼どきなのに受付の女性しかいません。
ここら辺のやり取りはかみ合わなかったのですが、今考えると午後からの営業だったのかもしれません。日本でも碁会所の営業時間は午後から始まるところが多いですからね。

しかし疑問に思ったことをいろいろ積極的に聞けるようになったことは大きな成長です。
だって日本語がまったく通じないんですよ、どうやって話していたのかは
覚えていませんが。

海峰棋院の楊さんへ電話もしてくれましたが、出かけていたのか繋がりませんでした。
仕方がないので施設の見学だけでもしていこうと思い、「参観」したい旨を伝えて
いろいろ見て回りました。写真を撮りたいので「ピクチャーOK?」と言うと、
OKサインをしてくれました。最初からこれくらいのノリで行けば良かったんですね。
英語の発音が悪くても何をしたいのかをしっかり示せば、伝わるものですね。

「対局をさせずに囲碁を教えるという取組み」=碁盤と碁石を使わずに教える仕組み
について不可思議でしたが、そこの施設は少し変わっていたので“もしかしたら”
という手応えはありました。

まず、碁盤と碁石を完全に机の中にしまうことができます。
机といっても、ものすごく広い会場に縦に連なった机があって、その中に碁盤と碁石が
収納されています。

碁盤が出ているところはせり上がっていて、碁石も左右にガシャガシャやると
せり上がってきます。

文章じゃとても説明できるものではありません。
それとは別の一室には碁笥が半分机に埋まっています。

これも説明しづらいのですが、基本的に碁笥には蓋がないのでこういう独特なことが
できるんだろうなぁという感想です。
※中国ルールのため、アゲハマは相手の碁笥に戻す。海峰棋院には蓋がある。

未知の道具に心躍らせながら、碁盤と碁石を使わない指導法への想像も膨らみます。

“碁盤と碁石を完全に机の中に収納できるんだから、上でプリントでもやるのかな。”
“けど、中国棋院が採用した画期的な方法だって噂だしなぁ”

残念なことに受付の楊さん一人だけなので、詳しくお話を伺うことはできませんでした。
誰もいない(ように見えた)ので、写真を数枚パシャパシャ撮っていると、PCで事務作業をしているおじさんがいつの間にかこちらを見ていました。

どうも不意打ちを喰らうと「你好」とか「ソーリー」といった基本的な対応ができなくなります。奥のほうがやけに薄暗かったので、本当に営業しているのかなって最後まで疑問に思ってました。

※伏線として海峰棋院の楊さんから、向こうはだいぶ寂れてきていると聞いていたため。

ちなみに某プロ棋士のブログで、その「対局させずに」「碁盤と碁石を使わずに」教える囲碁入門の一端が載っていました。今度また台湾へ行く際には、ぜひヒントを掴みたいと思います。

さて、応昌期基金への取材はこれくらいです。
結局、施設の見学だけしかできませんでした。
このあと名人児童棋院の前に、もう一か所「中華棋院」へ向かいます。
ここは碁会所と子供教室を両立させているところです。

ここに至るまで、やはり道に迷って時間を無駄に使ったため、ここの取材はサクサクっと終わらせます。何といっても碁会所ですからね、席料を払えば問題ありません。
やはりアマ六段を名乗るとそれ相応の人が打ってくれます。

碁会所としてはそれほど大きくありませんが、層の厚さはさすが台湾です。
ゴリゴリの力碁のおじさんを負かしたのはよかったのですが、問題はこの後です。
見た目小学5、6年生くらいの子と対戦しました。
院生でも学習生でもないとはいえ、碁の内容は驚くほど大人びた落ち着いたものでした。

ここにきて、長谷インの体力がそろそろ限界を迎えます。
何と有ろう事か、勝負所で「ハガシ」をしてしまいました。
もう、この4日間散々歩き回って、WiFiの電波を探して、夜は翻訳作業に
明け暮れていたわけです。正直、意識がもうろうとしていました。

打って指が離れた瞬間、嫌な筋が見えて反射的に石を打ち変えてしまいました。
まだそこで投げればよかったのですが、「ハガシで負けました」というニュアンス
のことを伝えるのが難しかったのです。小さな声で「ソーリー」と言いましたが、
もはや声になっていませんでした。

ここから先は語るに及ばず、もう内容はボロボロです。
しかも最低なことに投げるタイミングを逸して、投げ碁を結構打ってしまいました。
小学生相手に反則をしたあげく、ソーリーも声が小さいし、碁の内容はボロボロだし、
もう散々です。

日本人としてその場で切腹するのが礼儀ですが、空港には刃物は持ちこめませんし、
切腹すれば現代ではただのクレイジー野郎です。
泣く泣く、恥をさらしながら最後は投了しました。

この時点で相当疲れているのは察してください。
特に「モナリザ」のような姿勢を指導している身としては、ハガシをする余地など
ありません。疲れているときほど姿勢を崩しやすいため、最上級に疲れていたと
言い訳するほかありません。

2局終えて、子供教室のほうを撮影させてもらいました。
碁会所の中にもう一つ部屋があって、そこで子供たちが学んでいます。
デパートの託児所のようなイメージです。

一応「日本語しゃべれる方はいますか?」と聞きましたが、自分の英語力のなさも
大概ですね。

「I’m JAPANESE.」
「japanese language?」(ジェスチャーしながら)

「わたしは日本人です。」
「日本語?」(喋るジェスチャー)、周りを指す。
おばちゃん「???」

まあ、そうでしょうね。
発音も伝わりづらいでしょうし、もう少し文章何とかならんものですかね。
ずっとこんな感じでした。

「私は日本人」
「うんうん、分かってる。」
「日本語・・・しゃべれる方はいますか?」(と言いたい)
「???」

また恥ずかしがりの癖が出てしまい、「speak 」なんて単語をあまり使いたくないんですよね。ちゃんと伝わるのか不安ですから。

やっと伝わりましたが、やはり日本語を話せる方はいませんでした。
取材となると、やはり日本語でのやり取りが不可欠です。

中華棋院で一つ思ったことは、おじさんたちの対局マナーが相変わらずよくないことです。碁会所単体ならそれでも構いませんが、あまり子供たちの教育には良くないんじゃないかなと思ったり。

帰り際にエレベーターに乗ろうとすると、何やら先ほどのおばちゃんがこちらにきて、壁の写真を指差していました。

おばちゃん「******」
長谷イン「???」
長谷イン(子供の写真だけど、さっきの子とは違うしな・・・。)
おばちゃん「******」
長谷イン「・・・・・・、あっ!」

そうです、その写真は日本の囲碁ファンなら誰もがよく知っている顔でした。

それは子供の頃の張羽先生です。
面影がバッチリ残っていましたね。

他の子どもの写真もあったのですぐには分かりませんでした。
もう帰ろうとしている自分に一生懸命伝えようとしてくれたのは本当に有り難いことです。台湾では何かと助けられているので、自分も見習わないといけませんね。

中華棋院をあとにする頃にはもう夕方になっていました。
4日目の間にどうしても「九份」に行きたかったので、もう残り時間はありません。
これから名人児童棋院にお礼文を渡しに行って、台湾棋院を覗いて行こうかなという具合です。

(名人児童棋院にて)
謝さん「おお、ナガタニさん。」
長谷イン「先日はお世話になりました。」
謝さん「どうぞ、中へ。」
長谷イン「いえいえ、今日は手紙だけ渡しにきました。」

三か国語の手紙を渡す。

さすがにびっくりしていましたね、繁体字と日本語と英語でお礼の旨と連絡先が書いてあります。大学生の女の子がいなかったので、ラインのIDをその子に渡してもらうようお願いしました。他意はありません、あくまでも日台友好です。

その足で向かいの3軒隣にある台湾棋院へ行きました。
エレベーターを昇ったら入り口に何やら数人いて、ただならぬ空気で座っていました。
(これはまずいな・・・。)と思いながらも、ダメ元で挨拶文を手渡すとやはり断られましたね。おそらくもう閉める時間だったのか、中で大事な手合いでも打っている雰囲気でした。

本来ならここが一番の目的地だったはずですが、今回ばかりは致し方ありません。
また次回への課題にして、リベンジしたいと思います。

さあ、いよいよ囲碁取材もそのすべてを終えることができました。
今回は5か所回って、取材できたのは実質2か所だけです。

時間を有効に使うことができなかった反省も含めて、初めての海外旅行(一人旅)にしてはまずまずの成果と言えるでしょう。

ここから時系列は「台湾編その5」に戻ります。

はたして長谷インの運命は!?
そして次回はついに完結します。

(最終回「成長の証」へつづく。)

2016/03/19

囲碁, 長谷俊インストラクター

長谷インのグローバル囲碁旅行記 ~台湾編その8~

皆さんこんにちは。

囲碁に無限の可能性を感じている長谷インです。
アルファ碁vs李世ドルの対決はついに決着がつきました。
最後まで人類の最高峰としてAI(人工知能)に真っ向勝負を挑んだ李世ドルは
偉大な棋士です。今後はAIを利用して人類がどれだけ高みに近づけるのか、
それともAIが神様になってしまうのか、まだまだ目が離せません。

〜前回のあらすじ〜

やっとの思いで囲碁取材をすることができた長谷イン。
99パーセントのご厚意と1パーセントの勇気で無事に難関を乗り切りました。
この先にはまだどんな壁が待ち受けているのでしょうか!?


台湾編その8 「正直、可愛かった」

海峰棋院を後にした長谷インのテンションはすこぶる快調であった。

ルンルルン♪ルルンルルン♪

初めてまともに人と会話できたので、それはもう気分爽快ですよ。
このままのテンションでいざ台湾棋院へ、Go!

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「うっ、また道が分からなくなった。」

そうなんです、またなんです。
誠にアホで申し訳ありませんが、丸い交差点に差し掛かり、またどの方向から
来たのか分からなくなりました。本当ならまっすぐ前に進めば、誰でも駅に着く
はずなんですよ。それがデカくて丸い交差点なもんだから、ルンルン気分で
歩いていたらいつの間にか方向感覚を失いました。

“どこまでアホなんだよ、学習しろよ。”

今どきAI(人工知能)だって学習しているのに、まったくもう原人レベルで
学習能力がありません。またこの後も不毛なウロウロ状態が続くわけです。
こちとら時間がないし、暑いし、疲労がたまって死にそうです。

吉野屋、海峰棋院でだいぶ回復したとはいえ、それはあくまでも気力の充実
であって、体には確実に連日のダメージが蓄積されています。

台湾での行動といえば、「迷子」「検索」「翻訳」のほぼこの三つだけですからね。

碁会所で打ったり、棋院で取材している時間はこれらに比べると致命的に短いわけです。
ヘトヘトに歩きながら、コンビニを見つけては飲み物を買って、また位置検索を
しながら電柱の住所と照らし合わせての繰り返しです。

今思うとすごいですね。

よく迷子になれるし、深みに嵌まるし。何度も言うように、台北市内の道はタテ、ヨコ
で非常に分かりやすい造りになっています。そう、迷う道理がないからこそ
迷ってしまう。一人で何とかできそうだからこそ、諦めが悪くなり、かえって状況が
悪化しています。

もうここの記憶は定かではありません。
どうやってこの無限地獄を抜けだしたのか・・・?

旅行期間中はほぼこのジレンマの繰り返しで、さすがに覚えていません。
というより、適当に歩き回っていてもどこかの駅にぶつかるはずです。
(それでもここでまた2時間くらいは歩き回っていました。)

どうにか駅に着き、そこから台湾棋院の最寄り駅まで移動します。
地下鉄は簡単ですね、だって方向間違っても一駅のロスで済むんですから。
でも最寄り駅からまたもや迷いました、もう何回目だよ、何なんだよ。

昨日来たばかりなのですが、そもそも出口を変えると方向性が分からなくなります。
確か降りた駅も若干近い方に変更していました。余計なこと(ショートカット)を
しようとして、全然時間短縮になっていないところが“長谷インクオリティ☆”です。

さて、何だかんだ(どうにかこうにか)着きました。
もう運動部の合宿か、ってくらい歩き回っています。
不本意ですけど。

さて、着きました。着きましたよ。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「行くか・・・、行かざるか・・・。」

いやいや、ここまで来て行かない選択肢はありません。
ここは行く一手です、行ってから考えるべきところです。
しかし囲碁では目を瞑って切るところも、現実ではそう易々とはいきません。

「行って死ぬのなら、それは本望だ。」

「ただ生き恥を晒した上に、おめおめ生還でもしたらどうする!?」

「行くか・・・、行かざるか・・・。」

そう、これは己との自問自答です。すべての答えを心の内に秘めているはずです。
自らに問い、導き出した答えとは・・・!?

“行こう、たとえ生き恥を晒して生還したとしても。”

大いなる決断の元に、今まさに勇気の一歩を踏み出します。
越えられなかった昨日までの壁を今、越えるために。

「・・・・・・。」

「ん・・・?」

「あ、扉が開いてる。」

そう、昨日までと一転して扉が開いていました。
雑居ビル5階のフロアにある二つの部屋の扉が両方開いていました。
その向こうにはさらにガラス戸があります。

「よし、これなら行ける、行けるぞ!」

「いや・・・、え?!」

「何か物凄く黄色い・・・。」

そうです、左の部屋は事務室的なことがすぐに分かりましたが、右の部屋は一面
黄色い壁紙に覆われています。恐る恐る、ガラス戸を開けて中を覗いてみました。

中の2人「!?」

長谷イン「に・・・你好。」(小声)

女の子「日本人ですか!」

長谷イン「!?」

不意を突かれてびっくりしました。
ひと目で日本人だと分かったらしく、日本語で話しかけてくれました。

※ここで得意の挨拶文を手渡す。

おじさん「どうぞ、中のほうへ。」

この方は謝さんといって、ここの責任者の方でした。
日本語は習得率5割くらいで、難しい話はできませんがコミュニケーションが
取れるレベルです。いきなりの訪問でびっくりされていましたが、何とか取材したい旨
を伝えることができました。

長谷イン「突然のことで申し訳ありませんが、ぜひ台湾棋院を見学させてください。」
謝さん「台湾棋院ならここから3軒先の向かいにあります。」
長谷イン「!?!?」

そう、そうなんです。

実はここは「名人児童棋院」という子供教室だったのです。
謝さんが窓際から台湾棋院の位置を示してくれましたが、
そこはすぐ向かいにありました。
どうしてこのような勘違いをしてしまったのでしょうか?

間抜けといえば、大いに間抜けな話です。事前に台湾棋院の場所を調べるときに、
「某知恵袋」の回答を参考にしてしまったのです。

しかもそれは、「台湾棋院」と打ってウェブ検索したものですが、その回答には
一言も台湾棋院とは記されていません。要するにネット情報をよく見ずに
鵜呑みにして、盛大な勘違いをしてしまったのです。

さて、どうします?皆さんなら。

子供教室を訪ねて、「台湾棋院を取材させてください。」と挨拶文にも記載して、
口頭でもはっきりと言ってしまいました。
しかも親切に場所を教えてくれて、さてどうしたものか、といった状況です。

「・・・・・・。」
「あの、ここも見学して行きたいのですがよろしいでしょうか?」

はい、成長しましたよ、図々しくも。
やはり日本語でコミュニケーションが取れるうえに、乗りかけた船ですからこの機を
逃す手はありません。海峰棋院の楊さんほど日本語は達者ではありませんが、
コミュニケーションが十分に取れるのは本当に有り難いです。

というか、嬉しくてここまで割とハイテンションで捲し立ててしまっているんですよ。
もともと喋るほうですから、通じるとなると鬱陶しいくらい自分の話をしてしまいます。
そんな状況で「勘違いでした、失礼します。」なんて言いたくはありません。

相手のご厚意に甘えて、Let’s取材開始です!

「名人子供教室」
・170人の生徒を抱える囲碁塾。
・将来のプロ棋士を育成している海峰棋院、台湾棋院とは違い、学習塾である。
・数名のプロ棋士とアマチュア棋士が指導に当たっている。
・30級〜7段までの段級位があり、アマチュア講師は5〜7段である。
(7段の講師は27歳)
・分院といって、300人、200人、170人(※古亭)、150人規模の同じ
教室が台湾に14か所ある。
・台湾の有名な囲碁教室は「名人子供教室」と「中華棋院」(分院4つ)、
「長清教室」(分院4つ)である。
(ほかにも囲碁 教室はある。)
・台湾では14年前に比べると子供の囲碁人口が衰退している。
(囲碁は難しくスポーツのほうが人気がある。)
・14年前はちょうど「棋霊王」(ヒカルの碁)が台湾でも流行った時期である。
・名人子供教室は囲碁人口と反比例して生徒数を増やしている。
(新たに分院したところでは300人の生徒を抱えている。)
・古亭の名人教室は碁盤が12面の二部屋で、ほぼ毎日午前、午後で子供たちが
出入りしている。
・内装は真っ黄色。
・受付はアルバイトの子が2人いる。(20歳の大学生と30歳の社会人)
・謝さんは24歳で囲碁を始めて、現在はアマ6段。

※古亭とは今取材している名人児童棋院のこと。(本院)

いろいろとお話を聞くことができました。
しかし、やはり詳しく聞こうとすると謝さんがうまく表現できない単語が出てくる
ようです。そこでまたしても図々しく、携帯をWiFiに繋いでもらいました。
パスワードを教えてもらったので、部屋の中でネットが繋がる状態です。

晴れてオンラインでの音声翻訳(※ほんやくコンニャク)を使えることになり、
さらにテンションが上がります。とはいえ、まだまだ文明の利器は想像を超えるほど
万能ではありません。特に敬語を多用すると、変換がおかしくなります。
また、一般的な会話のできる謝さんと(日本語が分かる)大学生の女の子の前で、
日本語を音声入力するのはこっぱずかしいものがあります。
(※ドラえもんの道具)

大学生の女の子は元気よく発音も良かったので、だいぶ好印象でした。
おそらく学校で習ったであろうテキスト的な受け答えが主でしたが、わかる範囲で
うまく喋っていたのですごく日本語が上手に感じました。
(コミュニケーション能力が高い)

最初、だいぶ若く見えたので(この子小学生か?)と思わず聞いてしまいました。
音声翻訳で「彼女は歳いくつですか?」と聞いたら、細かいニュアンスが伝わらずに、
お互いに顔を見合わせて「?」となる。

翻訳機「******」(歳いくつですか?と聞いたつもり)

女の子「何を言っているのか分からない・・・。」(困惑顔)

長谷イン(しまった。失礼なことを聞いてしまった。)

謝さん「20歳で大学に通ってます。」

長谷イン「そうでしたか。小学生かと思ったもので・・・。」

初めは全然伝わらずに困惑していましたが、どうも音声翻訳の訳し方がまずかった
ようです。それ以前に女の子の歳聞いて、あげく小学生に見えたとか無礼の上塗りを
する始末。当の本人は笑顔で「嬉しい・・・とびっくり!」と言ってくれていたので、
救われました。

もう、二人ともすごく笑顔で対応してくれたので、楽しい時間が過ごせました。
優しくされるとまた無礼な発言が出てしまうのは、長谷インの悪いくせです。

長谷イン「あなたは囲碁をどれくらい打てますか?」

女の子「うーん、ルールが分かるくらい。ここでは2〜30級くらい。」

長谷イン「囲碁教室で働いているのは何のためですか?」

女の子「えー、お金のため。あと子供好きだから。」

もう、こちらのアホな質問にも正直に答えてもらいました。
ちなみに昨日勇気がなくて入れませんでした、って言ったら二人とも笑っていましたね。
よくよく考えたら、扉が閉まっていたので休みだったのかもしれません。

この日はもう夕方になっていたので、残っていたのは謝さんと受付の子2人だけでした。
アマ5段のインストラクターの男性があとで来ましたが、爽やかで
カッコ良かったですね。ここのスタッフは全員すごく人当たりが良かったです。

最後に一緒に写真を撮ってくれて、いい記念になりました。
拙い中国語で「再见。」(さようなら)と挨拶して、名人子供教室をあとにしました。

「ありがとうございました。」

「バイバイ!」(手を振る)

女の子がお辞儀して手を振ってくれたので、コミュ障なりに笑顔でバイバイしました。
謝さんもすごく一生懸命日本語で対応してくれたし、女の子も明るいしすごく良い
雰囲気の教室でした。

長谷イン「また台湾に来たら寄ってもいいですか?」

女の子「もちろん!」

よし、またいつか来よう。

三日目はこの後、士林駅近くの夜市に行きました。
ここでもいろいろ書くネタありますが、これくらいにしておきます。
また「翻訳、迷子、ご飯」の3拍子ですからね。(結局ほとんど食べれませんでした。)

そうそう、台湾棋院にも寄りましたが、もう時刻が遅かったので閉まっていました。
4日目、明日はもう一つの棋院と共に台湾棋院へ最後のリベンジになります。

(明日へとつづく)

2016/03/09

囲碁, 長谷俊インストラクター

長谷インのグローバル囲碁旅行記 ~台湾編その7~

皆さんこんにちは。
“プラシーボ効果”絶大の長谷インです。

正露丸を飲んだ途端に腹痛が治まったとか、栄養ドリンク飲んだら体が軽くなったとか、
とかく影響を受けやすい脳ミソです。疑って効果がないより、信じて効くほうが良いですからね。
そんなわけで、そろそろ気功の勉強でもしてヒグマを倒しに行こうかという今日この頃です。

〜前回までのあらすじ〜

旅行先で何時間も翻訳作業に明け暮れる長谷イン。
「いざ出陣!」するも案の定、また迷子になる羽目に。
すんでのところで吉野屋に命を救われ再度、海峰棋院を目指し前へ。
はたして長谷インはたった一人で囲碁取材をやりきることができるのだろうか。
そしてこの旅行記はいつになったら完結することができるのだろうか!?

台湾編その7 「いよいよ囲碁取材へ」

吉野屋を後にした長谷インの体力ゲージはフル充填されていた。
そして目的地「海峰棋院」へ無事に着くことができた。
(いよいよ着いてしまったか・・・。)

実際に着くとすごく緊張しますよ。
もしかしたら潜在的に行くのが嫌で迷子になっていたのでは、というくらいに。
皆さんには申し訳ありませんが、ここから割と普通なので淡々と短くまとめていきます。

ポーン。(エレベーターの音)
ビルの6階、右手に見えるガラス戸の向こうに受付がある。

長谷イン(・・・くっ、予想外のガラス張り。こちらの動きが丸見えだ。)

受付の人「・・・・・・?」
ササッ。(死角に隠れる)

5分後。

心の声(どうする・・・。どういうテンションで行けばいい?)
心の声(ええい、もうここまで来たら!)
スタスタスタ。(扉の前まで歩み寄る)
ガラス戸「・・・・・・。」

長谷イン(しまったぁあ!オートロックだぁあ!!)
そう、オートロックでした。
その瞬間すべてを悟りました、“終わった”と。

“グローバル囲碁旅行記〜台湾囲碁取材編〜 完。”

長谷イン「くっ・・・。ここまでか。」
トットットッ。(女の子が駆け寄る)
ウィーン。(ガラス戸が開く)
長谷イン「うっ、これは・・・。」

まさかのアシストで中に入ることができました。
最後の勇気を振り絞って受付の女性に声をかけます。

「に・・・你好。」(小声)

そして挨拶文を手渡します。
受付の方は何やら困った様子で奥のほうへ。

「後はもうどうにでも、なるようになれ。」ってな気分ですよ。(ハタ迷惑)

もちろん門前払いされてもしょうがないですし、そのほうが気が楽です。
入り口付近には3人くらい子供がいましたが、お昼時なこともあって中から
わらわら集まってきました。

長谷イン(くっ・・・。子供たちに囲まれてしまった。)
    (何だその物珍しそうな目は・・・。)
    (はっ、よく考えたらこの子達全員院生じゃないのか。)

そうです。棋院に行って子供がいたらそりゃ院生ですよ。
戦闘力(棋力)でいったら長谷インをはるかに凌駕する実力のはずです。

そんな不思議そうな目で見られても・・・。
そもそも不審な人物(日本人)が突然訪ねてきたら、そういうリアクションに
なるのかもしれません。

当の長谷インは挨拶文を持って、ただただ棒立ち状態です。
まさに針の筵、オオカミに囲まれた赤ずきんちゃんの気分です。

ちなみに子供たちと言っても、おそらく中高生くらいの年代です。
台湾の子たちは見た目が特に若いですね。
思い切って声をかければ良かったのですが、そんな余裕はありませんでした。

そうこうしているうちに、裏では職員の方達がバタバタしていました。
改めて挨拶文をマジマジ見られているのが、今思うと死ぬほど恥ずかしいです。

結局「そこでちょっと待ってて」という感じだったので、しばらく待機していました。
程なくすると、何と日本語を話せる方が現れました。
ご多忙の中、イレギュラーな旅行者のためにわざわざ来てくれたみたいです。
日本語の習得率は7割程度といったところでしょうか。
細かい単語は分からなくても日常会話に支障のないレベルです。

今まで「あ、あう。うう。」とかどこのオオカミ少女だよ、って感じの長谷インでした。
しかし、この旅行で初めてまともに会話できる機会に恵まれました。
もうね、物凄く親切にいろいろと案内してくれたり、質問に答えてくれました。
奥にいるお昼休みの子供たちを紹介してくれて、一局打つ機会も設けていただきました。

長谷イン「・・・・・・?」
長谷イン「あの、この子達は院生ですか?」
楊さん「この子たちは学習生と言って、台湾棋院の院生とはまた違います。」
長谷イン(あれ、この子たちどう見ても小学生だよな。)
長谷イン「向こうの部屋の若い子たちは今何をやっているんですか?」
楊さん「今日は台湾ナショナルチームの集まりです。皆プロ棋士です。」
長谷イン「!!!!!!」

そうなんですよ。最初にわらわら集まってきた子たちは全員がプロ棋士だったのです。

長谷イン「今日は大人の棋士の方はいませんか?」
楊さん「うーん、今日はナショナルチームの集まりだから、若い子たちだけです。」
要するに向こうじゃ10代の子たちが世界で活躍する精鋭ということです。
大人じゃ通用しないでしょ、くらいの感じでしたからね。

楊さん「こちらがナショナルチームの監督、周俊勲です。」
長谷イン「あ、あ、どうも。你好。」(小声)

皆さんは周俊勲をご存知でしょうか?
世界タイトルを取ったこともある台湾のプロ棋士です。
台湾の囲碁ファンなら知っていて当然の存在です。
しかし自分が微動だにせず固まっていたので、楊さんが顔のことなど慌てて
説明してくれました。(※)
※周俊勲の顔には特徴的な痣がある。

いや、ちゃんと知ってましたよ。
知ってましたが、海外のプロ棋士はやはり顔よりも名前で覚えていることが多いです。
顔を見たときに「あっ、この方は・・・。」と思いましたが、名前を聞いてやっと
世界チャンピオンだと分かりました。
(実際に著名な方を前にすると、ミーハーなリアクションを取れないものです。)

プロ棋士が集まって打っているところの見学はさすがに遠慮しました。
後は施設を一通り説明してもらって、奥の部屋でいろいろとお話を伺いました。
以下箇条書きにします。

・海峰棋院は財団法人で国内でのプロ棋戦を運営している。
・台湾主催の国際戦は、台湾棋院が取り仕切っている。
・各棋戦の優勝賞金は次の通り。
 棋王戦100万元(400万円)、天元戦80万元(320万)、
 王座戦40万元(160万)、海峰杯60万元(240万)
・5、60代の棋士もいる。
・海峰棋院では「学習生」というプロの卵がいる。(台湾棋院の院生とは別)
・台湾棋院がプロの免状を発行しており、海峰棋院には権限がない。
・院生は半年ごとに入れ替わり、18歳まで在籍できる。
・院生のプロ制限年齢は18歳まで、社会人は21〜2歳
・学習生は週5日海峰棋院に通っており、昼間は囲碁を打って夜に勉強している。
・学習生の制度は一昨年立ち上がったばかりでまだ2年目。
・院生は土日台湾棋院に通う。
・学習生+院生は合わせて週7日、棋院に通う。
・学習生は義務教育課程でも学校に通わない。
・棋院が学力をチェックして学校に申請すれば卒業証書がもらえる。
・この制度は囲碁に限ったものではなく、ほかの専門分野でも認められている。
・台湾では中学、高校に囲碁のクラスがある。一般的な勉強も行われている。
・60人規模の囲碁クラスがある高校もある。
・台湾は少子化で一時期よりも囲碁人口が下降気味である。

皆さんどうでしょうか。
びっくりしますよね、タイトル戦の優勝賞金が日本の10分の1ですよ。
自分が台湾に行った限りでは、物価は日本とそう変わりません。

やはりトーナメントプロ一本で生活するのは厳しいと仰ってました。
それからプロ組織は台湾棋院と海峰棋院の二つですが、台湾棋院のほうが何かと
権限が強いようです。プロの段位免状の発行から国際棋戦の開催まで、要するに
台湾棋院が日本棋院に匹敵する役割です。

あとは「学習生」です。
台湾棋院の院生とは別に海峰棋院でプロを目指している子たちですが、プロを目指すため
院生にもなります。何せ、台湾棋院がプロの免状を発行しているわけですから。
週7日、毎日棋院に通っているみたいです。(学習生5日、院生2日)

学習生の事情を知り、“不遇でも、必死に頑張っているな”と思いました。
だってプロになっても生活が苦しいのに、その上プロになるのも狭き門です。
義務教育そっちのけで囲碁ばかり打って、落ちた子はどうするんだよって話ですよ。
(それでも、昼休みにゲーム機で遊んでる姿はまさしくただの小学生でした。)

そして、向こうの囲碁界の事情は日本とあまり変わらないのにも驚きました。
一つ目は「少子化」です。
単純に子供の数が減ったのと、ほかの人気競技に比べて囲碁に憧れる子はいないと。
囲碁が流行ったのは14年前の「棋霊王」(ヒカルの碁)の頃で、そのときから囲碁人口は
下降線を辿っているとのことです。

「それって日本と同じじゃん!」

台湾でもヒカルの碁が流行って、ブームが去るとどんどん廃れていったようです。
まあ、なかなか「囲碁打つ人カッコいい、素敵!」とはなりませんからね。
しかも2日目に行った棋聖模範棋院(碁会所)は場末の雀荘のようでしたから。

二つ目は「人気の女性棋士」がいるということです。
プロ棋戦のトーナメント表を見せてもらい、そのとき女性で準々決勝まで勝ち上がっている
棋士がいました。

楊さん「黒嘉嘉(ヘイ、ジャアジャア)って知ってるでしょ?」
すいません、知りませんでした。その方は日本でいうと吉原由香里プロに当たります。
美人で実力もある人気棋士です。

台湾の棋院を訪ねるくらいなら、当然知ってるでしょ?ってレベルですが、
まったく予備知識がありませんでした。帰って検索したら、なるほど可愛いですね。
やはり容姿に実力が伴うと、人気が出るのはどこも同じですね。

今後、院生(学習生)の子たちが毎日勉強し続ければ、日本のみならず、あるいは中韓に
追いつくのではないか。そんなことを聞いたら、
楊さん「いやいや、国際戦ではまだ全然ダメだから。」だそうです。
そもそも運営するのに資金が足りないような話をしていたので、現実は厳しいなと
痛感しました。

そんなこんなで、お昼休みの学習生の子と対戦することになりました。
楊さんは多忙のため出掛けてしまいましたが、碁盤を挟めば日本も台湾も関係ありません。
言葉が通じなくても、石で会話をするまでです。
楊さんには、最初の手合いと時間設定だけお願いしました。

長谷イン「日本ではアマ六段で打っています。」
楊さん「この子がアマ七段くらいかな。」
ということで、秒読み20秒3回、互先での対局です。

アマ六段なのに、こちらが握ろうとしたらその子はキョトンとしていましたね。
細かいやり取りはできないので、目の前にあった白石を握って始めました。
内容は学習生の子がだいぶ粗削りな打ち方でした。
序盤早々、明らかにやりすぎな疑問手を打ってきたので相応に咎めます。
こちらが優勢になったのも束の間、時間に追われてヨミを微妙に間違えてしまいました。

長谷イン「くっ・・・。30秒あれば・・・。」
結局こちらがモタモタしているうちに、潰しきれずに形勢逆転して負けました。
驚いたのは検討のときです。
少年A「ここ、おかしい。」
片言の日本語で先ほどの疑問手の場面を指摘します。
長谷イン「うんうん。」
喋れないので、とりあえず頷くリアクション。
少年A,B,C「ここをこうしたらこうだし、こうなんじゃない。」
おお、さっき自分が読み切れなかったところをスラスラと解いていきます。
対局した子も負けじと「じゃあ、こうしたらこうでこう打つ。」
ああ、見ていると力の差がはっきり分かります。
長谷インが30秒欲しかったところを、3秒くらいでスラスラ解いてその先を考えている
のです。それに粗削りなのは大局観で、部分的な折衝は死ぬほど粘り強く読んでいます。

これが「台湾のプロの卵かぁ」と感動しました。
それと同時に「日本のほうがレベルが高い」というのも実感しました。
おそらく皆、東京都代表、神奈川県代表レベルくらいはあります。

でも、検討の内容が自分にとってちょうど良かったんですね。
自分より2〜3子くらい上手で、程よい解説(理解できる範囲)だったということです。
4子以上の差なら多分言っていることが理解できないでしょうから。
(もちろん言葉は通じず、全部盤上の会話です。)

棋力とは関係なくすごいなと思ったのは、こちらの緩着をまったく指摘しないところです。
形勢有利の場面から何度もこちらにチャンスがあったという図を作りつつも、基本的には
相手の子のミスを議題にしていて、こちらのミスについては言及していませんでした。
うーん、人間的にも2〜3子上手だったか。(長谷インよりも)

取材の一環で施設の写真を撮らせてもらいましたが、パシャパシャ撮りまくるのも
失礼なので3枚くらいにしておきました。
もうちょっとコミュニケーション撮れたら、皆さんと一緒に写真を撮ったのになぁ。
帰り際、もう楊さんがいないので、受付の女性に挨拶をしました。
当然、まったく喋れないのでオフラインでの翻訳で簡単に

「今日は見学できて良かったです。ありがとうございました。」

と携帯を見せたらちゃんと伝わりました。
やはり意志疎通は人間にとって一番大切なことです。

お礼を伝えて海峰棋院を後にした長谷イン。
初めてゲストハウス以外でまともにお話することができたので、テンションはすこぶる
快調です。精神力全回復!次に目指すは昨日撤退を余儀なくされた「台湾棋院」。

台湾旅行3日目、長谷インの戦いは終わらない。

(つづく)

 

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