2016/02/27
囲碁, 長谷俊インストラクター
皆さんこんにちは!
ついに、ついに、ついにやってきました!
「台湾旅行記〜the完結編〜」
長谷インのひと夏のおもいで、そのすべてを公開します。
本当は「台湾旅行記〜the簡潔編〜」そのすべてを後悔します、ってなもんですよ。
だって涙が出ちゃう、長いんだもん。(話が)
旅行記を待っていてくれた方、そしてとっくに忘れていた方へ前編のあらすじを
説明しておきましょう。
旅行前 “ノー準備、ノーライフ”なのに特に何もしない。
一日目 言葉の壁を感じる。ただ無駄にプライドが高いので、身振り手振りなんて
モンキーな真似はしない。
二日目 「ビーフorチキン?」「No.I'mブタ.」そして絶望する。
三日目 新展開1
四日目 新展開2 その後、消息が途絶える。
五日目 すべての答えが機内で明らかに。
タイムスケジュールはこんな感じです。
旅行記1〜5までの間に前章、一、二日目と四日目後半まで書き終えています。
ここからは三、四日目の囲碁取材についての回想になります。
「そもそも何しにいったの?」
「修行なの、何もしてないの、バカなの?」
って彼女がいたら言いそうなもんですよ。(いたらねぇ)
ではでは、さっそく新章を語りましょう。
「長谷インのグローバル囲碁旅行記〜台湾編その6〜」
〜前回のあらすじ〜
魔境九份(キュウフン)にて最終バスを逃してしまった長谷イン。
このまま千と千尋のようにハートフルな妖怪ファンタジーが待ち構えているのか。
はたまた体力の限界を超えたその先に待つのは無情な結末か。
その行く末や如何に?!
ご紹介が遅れました。
熊を倒す(予定の)男、長谷インです。
「片腕はくれてやる。」くらいの名言は残したいなと常々思っています。
命あっての物種とはいえ、いつその命を燃やし尽くすかに人生の美学を感じます。
異国の地で命の火を燻ぶらせている場合ではないんですよ、まったく。
台湾編その5「進め、進め一歩前へ」
時間軸は三日目に戻ります。
二日目までご飯を食べるのもままならず、空腹感と何もできなかった絶望感に満たされ
つつも日は昇り、そして朝を迎えます。
「今日は寝れたな。」がこの日最初の感想です。
言わずもがな、一泊300元(1200円)のゲストハウスで迎える朝は
清々しいものではありません。
7月初旬の台湾は日本の猛暑と同じくらい暑く、羽織っていたシャツは信じられないくらい
臭くなっていました。
(シャワーを浴びて、洗濯でもするか。)
後ろのデカい虫を気にしつつも、シャワーで汗を流します。
洗濯も勝手にやって勝手に干すようなもの(有料)だったので、洗濯が終わるまで
適当にウナギの寝床のようなベッドで過ごしていました。
“危機感がまるで足りない。”
悠長に朝を迎えて、シャワーを浴びて、洗濯ものやっている場合ではないんですよ。
起きたのが9時台、行動開始したのが11時台とか、余裕かましすぎ。
正確に言うと1時間の時差があるから向こうの時刻で8時起き、10時出になりますが、
二日間を棒に振った人間の行動とは思えません。
しかし、何の策もなく三日目の朝を迎えるほどのたわけでもありません。
そう、それは確かに完成していたのです。
“ほんやくコンニャクお味噌味!”
ご覧のスポンサーの提供です。(子供たちに夢を与えるネコ型ロボット)
ドラえもんはさておき、オフラインでの翻訳作業を前の晩にある程度終わらせて、
なおかつ朝もその作業を繰り返すこと計5時間。ようやくできました、挨拶文。
いまだに内容が手元にあるので、恥ずかしながら日本語訳だけでも紹介させていただきます。
(以下原文)
こんにちは。私は日本の旅行者です。突然の来訪申し訳ありません。
私は囲碁愛好家で、このたび台湾の囲碁教室を見学させていただきたく来た次第です。
しかし残念なことに私は中国語を全く話せません。また英語もほんの少ししか知りません。
PCの翻訳機でこの文章をしたためてきましたが、オフラインではほとんど使うことが
できません。ご迷惑かと思いますが、少しだけでも見学させていただければ幸いです。
少しで良いので、ぜひ海峰棋院の様子を見学させて下さい。
(原文まま)
如何でしょうか。とても良識ある大人が書いたとは思えません。
しかもなぜこんな短文を書くのに5時間以上も費やしてしまったのか。
まず引っかかってしまったのが「敬語」です。
日本語より英語に近いので、事細かな表現はしません。
「させて頂きます。」なんて翻訳しようものなら意味不明な文になってしまいます。
「させて頂きます」→「する」くらい簡明にしないととても初心者に翻訳など
できないわけです。
あと過去形(了)とか、とにかく余計なものを排除して簡潔にまとめる必要があります。
日本語を打ちこんで中国語(繁体字)に変換し、その文をまた日本語に変換します。
(例)こんにちは→你好→こんにちは
これでなるべく誤差が出ないようにひたすら調整していくわけです。
こうなると丁寧にすればするほど厄介になるため、簡易にまとめることに徹しました。
一例として
「我是圍棋愛好人,這次請容我们參觀台灣的圍棋教室來了。」
(訳:私は囲碁愛好家で、このたび台湾の囲碁教室を見学させていただきたく
来た次第です。)
多分これ、まともな翻訳になっていません。
日本語の入れ方によって文法も前後するし、それによって意味も変わってきます。
ちなみに同じ翻訳サイトで上記の文を日本語に再変換したものがこちら。
(訳:私は囲碁の趣味人で、今回は私を収容してください。台湾を見学する囲碁教室は
来ました。)
もうね、なんだよこれは。ちなみに再チャレンジしてみた結果がこちら。
(日本文)私は囲碁ファンです。台湾の教室を見学に来ました。
(繁体文)我是圍棋愛好者。到參觀來了台灣的教室。
(再翻訳)私は囲碁の愛好者です。台湾の教室を見学してきたまで(に)。
今やってもこんなもんですよ、もうアカンてホンマに。
こんなことをひたすらやり続けて5時間。
「後は清書するだけだ、ヒャッホイ!」
なんてテンションではありませんが、相当な手応えを掴んでいました。
ゲストハウスでは清書するスペースがないので、いざ外へ。カフェに寄った後、
海峰棋院を目指します。場所はグーグルマップで調べは付いています。
宿泊場所の忠孝復興駅の隣、忠孝敦化駅から大通りをまっすぐ下へ降りるだけ。
“超簡単、猿でも分かるルート検索。”
途中の円形の大きなT字路に差し掛かれば、もう勝ったも同然です。
右へ行って下へ降りるだけ。
とはいえ、ここまで道に迷って苦汁を舐めつづけているのも事実。
復興南路一段から敦化南路一段までの道のりを慎重に横移動します。
ゲストハウスを出てしまうとまともにネットを使える環境ではないので、
スクリーンショットした地図を必死に確かめながら慎重に足を運びます。
そして、そして・・・ようやく着きました、目的の大通り。
下へ向かって行くとそこには円形の大きなT字路が。
「勝った・・・。計画通り。」(某人気マンガより引用)
こんな猿でも分かる道を歩めたことが、嬉しくて堪らないのはなぜでしょうか。
ここでファミマを見つけたので、中のイートインスペースで先ほどの清書に移ります。
ここのイートインスペースは「カフェか!」とツッコみたくなるくらい広いです。
もうね、暑いんですよ、とにかく。
飯もろくに食わずにグダグダしていたとはいえ、これまでに買った500ミリペットボトル
の数は10本を超えていました。まあ今日は手こずらないで来ているので、幾分前日よりは
体力、気力ともに余裕があります。慎重に清書を進めていますが、書いている紙は何と
ゲストハウスの案内のコピー用紙の裏。まったく何を考えているんだ、最近の若者は。
以前碁会所で「若者じゃなくて、馬鹿者。」と冗談で言われていましたが、
本当にアホなのか君は。
一応言い訳をしておくと、書ける紙が手帳と旅行の案内、フライトの案内用紙くらいしか
なかったんですね。あとは普段使っているテキスト(棋譜or問題)の原本。
何も用意せずにきた挙句この様なわけですが、コンビニにノートが置いてなかったんですよ。
ノートが置いてある店を探すのにまた迷子になったらただのドアホですから、
アホに甘んじたわけです。丁寧に丁寧に書き連ねてようやくできました、挨拶文。
実際いまになって見ると汚い字ですよ、まったく。
結構丁寧に書いたつもりですが、残り少ない時間への焦りを感じます。
ついに対決のときがやってまいりました。
“誰と戦うかって?”
“昨日までの自分とです。”
前日に名誉の撤退をした自分に恥じるところはこれっぽっちもありませんが、それでも
前に進めなかった無念を晴らすために。いざ、海峰棋院へ!
ウィーン。(ファミマを出る音)
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「どっちから来たんだっけ?」
不覚にもさっき来た道が分からなくなってしまいました。
大きなT字路をどう来たのか、どっちに向かって行くのか。
ここで一旦止まれば良いものを、生粋の迷子は一味違います。
「よし、こっちこっち。」
基本的に立ち止まらずに突っ走るのが迷子の特徴です。
分かっているつもり、何とかなるだろうと思って同じ轍を二度も三度も、
いつまでも踏んでしまうわけです。
まあここから迷いましたね、迷いました、迷いました。
グーグルマップで「海峰棋院」と検索してみてください。
上に丸いT字路があって、その上に忠孝復興駅と忠孝敦化駅があります。
どうやって迷子になるの?君いくつ?ってレベルですが、それができれば苦労は
しないんだよ。簡単が故に安易な行動を取ってしまい、ドツボに嵌って行く。
いつものことです。
ちなみに三日目のお昼時ですが、まだご飯を食べていません。
もう少し正確に言うと、ここまでの食事はご覧の通りです。
一日目 機内食、クソ不味い麺と水餃子
二日目 饅頭3個
三日目 まだ水分以外に口にしていない。
初日の機内食は美味しかったですよ。
その晩は滅多なことで「不味い」と言わない長谷インを驚嘆せしめた食堂のメニュー。
二日目の饅頭はお腹空きすぎてて、味はどうでも良かったです。
三日目のお昼、腹ペコで右往左往の繰り返し。
唯一の救いは暑すぎて食欲が減退していた分、飲み物で誤魔化せていたという点でしょう。
しかしもうそれも限界です。
ここで行き倒れになってしまうのでしょうか、はたして日本の若者を台湾の方は
助けてくれるのでしょうか。若者といっても当時27歳ですけどね、ただのバカ者ですよ。
そうこうしていたら希望の光が見えてきました。
『吉野家』
これって昨日スルーした吉野家ではないですか。
『復興南路二段、吉野家大安店』
興味のある方はグーグルマップで検索してみてください。
長谷インがどのようにグルグル迷子になっていたのか、よく分かります。
「吉野家かぁ、外国まで来てチェーン店に入るのは妥協だよね。」
「・・・・・・。」
「よし、妥協しよう。」
3秒で諦めました、いろいろな見栄を。
照りつける猛暑の中、迷いに迷って予期せぬ砂漠の泉にたどり着いたわけです。
皆さん、砂漠の泉が「アルプスのおいしい水」だったらどうしますか?
「何だ、砂漠くんだりまで来てミネラルウォーターなんて飲めるか。」
「ご当地の湧き水だよ、湧き水。」
そんな硬派な態度でいたいですよ、修行で来た身ですしね。
でも「みずぅ・・・み、みずをぉ・・・だれかみずぉを。」って状況なのをお忘れなく。
ウィーン。(吉野家に入る音)
心の声(前にお客さんが一人いる、やり方を見ておかねば。)
(くっ・・・、お焼香と同じくらい見えづらい。)
(うう、自分の番か・・・。行くしかない!)
長谷イン「你好。」(小声)
店員さん「******」
長谷イン「あー、うー。」(メニューを指さしながら)
店員さん「******」
心の声(くっそぉ、メニューが小さくて指しきれない。)
店員さん「??(汗)」
そりゃあ店員さんも困惑しますよ。だって見た目は台湾の方とそう変わらないですから。
あとメニューを指して頼むんですが、AセットBセット的なものがあって、さらに
ドリンクも選ぶシステムらしいです。
そういうマック的な「サイドメニューはどうしますか、ドリンクは何になさいますか。」
的なものは苦手なんですよ。こういうときでも値段を気にして安い豚丼を選ぶあたりが
さすがだなと思います。(ダメなほうの意味で)
さて適当に選んで、あとは横でしばし待ちます。
マックと同じシステムと分かったから良いものを、自分の前に誰もいなかったら
どういう失態を犯していたのか想像もつきません。
そして待ちに待って、待ち焦がれたチェーン店のまともなご飯です。
セルフの紅ショウガを取って、席に付いてようやく落ち着きました。
「豚丼うめぇ!!!」
「紅ショウガうめぇえ!!!!」
「冷たい紅茶最高ぉおお!!!!!」
「枝豆うまいよぉおおお!!!!!!」
死ぬほどうまい、何これ、ホント何これ。
今までの人生の中でベスト3に入るくらい、もう形容し難いほどうまい。
日本語って不便ですね。
“美味しい”の最上級の表現を持ち合わせていないなんて。
本当に、ほんとうに本当に、いや本当に・・・。
この味だけは生涯忘れられないと言えるほどの超絶美味。
参考までに長谷インの人生ベスト3のメニューがこちら。
(順不同)
・北海道の小樽で食べた真冬の塩ラーメン。
・真夏のちゃんぽん屋で飲んだ氷水。
・猛暑の台湾で瀕死の状態で食べた豚丼。
これを見るに、極限の状況下だからこそ忘れられない味に出会えるのかもしれません。
小樽の塩ラーメン、ちゃんぽん屋の氷水も感動するくらい美味しかったんですが、
もうね、豚丼。台湾まで来て、ただの豚野郎になってしまった長谷インの心とお腹を
ここまで満たしてくれるとは。(※台湾編その3参照。)
紅ショウガも信じられないほどうまい、こんな紅ショウガ食べたことない。
セットメニューになぜ枝豆?って思ったのも束の間、ツッコむ暇もなくただ口に
放り込んでいく美味のハーモニー。
皆さん今、食を知らない貧しい青年に見えていることでしょう。
良いんですよ、幸せは値段じゃありません。
日本でぬくぬく生活していた過去の自分の言葉と、“大きな災難小さな幸せ”を体験した
今の自分の言葉とでは比べるべくもありません。
心もお腹も満たされて、精神力もフル充填!
元気100倍アンパンマン、もとい長谷イン!
まるで新しい顔に生まれ変わったような、清々しく晴れ晴れした気分です。
吉野屋の位置から目的地までの方向も見当が付いています。
後は恐れずに向かうのみ、それいけ長谷イン!
(一歩前へ、つづく。)