石音インストラクターブログ

2015/07/31

囲碁, 長谷俊インストラクター

長谷インのグローバル囲碁旅行記 台湾編その3

~前回までのあらすじ~

グーグルアース発言が発端となり、台湾囲碁取材を敢行した長谷イン。
無気力、無計画、無駄に弱気なことが災いして一日目から海外の洗礼を浴びてしまうことに。
果たして現代っ子の長谷インは今後どのように難局を切り抜けて行くのだろうか。

皆さんこんにちは。

全碁協ランキング大会「準優勝」、台湾囲碁取材「努力賞」の長谷インです。
思い出は胸に秘めているうちが花だと思いますが、甘酸っぱい蜜を吐き出しながら
書いていきたいと思います。

「二日目前半戦、ビーフorチキンor・・・?」

さて、やっと二日目ここからが本番です。
一日目をウナギの寝床のような宿で過ごした後、朝から行動を開始します。
寝起きは朝日の差さないカーテン部屋ですっきりせず、朝風呂では虫を警戒しつつ
シャワーを浴びて汗を流します。しかしこれしきのことはまったく意に介していません。
こっからはもう自分の領分である囲碁の取材です。
昨日までのようにウダウダ、グズグズしてしまうと思ったら大間違いです。

さてさて、台北市内を移動するためには電車かバスを利用しなくてはいけません。
バスには全車両に番号が振られています。東京では「~駅行き」となっているバスが
どこに停車するのかを見ますが、台湾では「〇〇(番号)」となっているバスの行先を
見るわけです。

台湾ではこちらが乗る意志を示さない限りバス停で停車してくれませんし、降りるときも
降車ボタンを押さないとそのまま通り過ぎてしまいます。観光地や空港行きのバスなら
分かりやすいですが、街中でバスを利用するのは慣れないと難しそうなので移動は
電車にしました。

ここで手に入れておくべきアイテムが「悠遊カード」です。
Suicaと同じで電車やバスを利用するときに使いがってが良く、
電車とバスの乗り継ぎがお得になったりMRT(地下鉄)の運賃が2割引きになります。
これは事前に調べていたので、さっそく購入するべく忠孝復興駅の券売機に向かいました。
悠遊カードの発行は調べていた通りでスムーズにできました。

次は券売機でカードのチャージに向かいます。

「・・・・・・。」

券売機が4つあって3つは人が並んでいます。
一番端の券売機はちょっと仕様が違う感じで、悠遊カードの目印がありました。
「これだと」思いさっそくチャージを試みます。繁体字で何が書かれているかイマイチ
分かりませんが、適当に金額を選んで100元札を投入。
「*******」(繁体字で何やらいろいろ書かれている模様)

どうも様子がおかしいのでチャージされたか分からずに一旦券売機から離れます。
どうしようか携帯で調べていると後からおばちゃんが来ました。
「*******」(台湾語もしくは北京語で何やら言われています)

そのおばちゃんが100元札を差し出して何か言っているようなので、察するに
「これあなたのじゃないの?画面がまだ終了してないわよ。」
的なことを言われている模様、こちらはコミュ障をフル回転させて
「あ、あう・・・あ、あ。」(※実際は声にならない音)
と身振り手振りで気にしないでください、お構いなくのポーズ。

というより違います、違います何でもありません的な感じだったでしょうか。
まあ100元はおそらくチャージされていない自分のお金だったので受け取りましたが、
あとは慌てふためいて笑って誤魔化していました。

おばちゃんも何だこの若者は?と思ったことでしょうね、自分自身なんだこいつはと
思いましたから。しかしまあ、おばちゃんのリアクションは世界共通なのでしょうか。
何を言ってるのかだいたい伝わりましたから。
(※田舎にいそうな、ちょっとあんたあんたおばちゃん。)

(誤字)昨日までのようにウダウダ、グズグズしてしまうと思ったら大間違いです。
(訂正)昨日までのようにウダウダ、グズグズしてしまうと思ったら大正解です。

ここで自分のコミュニケーション障害(shyボーイ)のひどさが
露わになってしまいました。昨日までは心の中の葛藤が9割方でほとんど自己完結
していましたが、「あ、あう・・・あ、あ。」
とかどこのカオナシ(千と千尋)だって話ですよ。

悠遊カードは隣の普通の券売機でチャージすることができました。
最初に試したやつは定期の券売機っぽかったです。(結局良く分かりませんでした。)

駅の改札を通ると「板南線」の青い標識が見えましたが、すぐには覚えられないので
「南北線」と勝手に日本の沿線に脳内変換していました。(青いし、南なので。)
ここから二度ほど乗り換えをしましたが、難なく目的の駅に着くことができました。
台北の地下鉄は東京に比べると非常に分かりやすいので、方向音痴の自分でも
ホームの路線図を見れば乗り換える駅はよく分かります。そう言いつつも反対方向に
幾度となく乗ってしまいましたが、一駅のロスで済むなら楽なものです。

「淡水信義線」は橙だから「中央線」にしようとか、スムーズに動けることで
自信を取り戻してだんだん楽観思考になっていきます。
とはいっても、ここまでSuica(悠遊カード)を購入して駅間を移動しました、
というだけなのですが。

電車に乗りながら早くも勝利を確信しています、根拠もなしに。
この楽観思考こそが長谷インの長所であり、長所でもあります。

この日の目的はまず「台湾棋院」に行くことです。
台湾棋院とは日本棋院のようにプロ組織を運営しているところです。
取材の筆頭候補で、かつ一番簡単に潜り込めるだろうと思いこんでいました。
日本棋院のような場所ならとりあえず一階には簡単に入れるだろう、と。

そもそも住所だけ調べて、あとはほぼ情報なしの状態ですからすべて想像でしかありません。
実際にどういう場所かは行ってみて確かめるしかありません、鬼が出るか蛇が出るか。
目的地の駅に着いて地上に上がったとき、ここからが本当の勝負だと感じました。

なぜなら「安心安全」の迷子機能を標準装備している長谷インが自分の足で歩いて
無事にたどり着けるのか、経験上甚だ疑問だったからです。このときの装備はノートPCに
携帯です。着替えの荷物はもちろん宿に置いてきましたが、現地でいろいろ困ることを
見越してノートPCをここまで持参してきました。このPCが軽いやつじゃなくて
家でもメインで使ってる普通に重たいやつなんですね。
さらに充電器も入れているので結構な重量になっています。

実はここまで間に、初日にリサーチしていなかった「台北フリーWiFi」の感度を
忠孝復興駅から乗り継ぎのMRT駅内でも調べていました。まあ地下鉄ではそこそこ
繋がりましたね、場所によるといった感じです。目的の街に出たとき、駅を離れると
やっぱり繋がらなくなりました。アクセスポイントが多いとはいえ、グーグルマップだけが
頼りの長谷インには少々頼りない存在です。

というか駅やコンビニ、電話ボックス、そこら辺のどこかで繋がることはつながりますが、
迷子になったここぞのときは大抵役に立ちませんでしたね。歩きながらマップを使っても
位置情報が切れしまうので、慎重に現在位置と目的地の場所を何回も確認しながら
かつネットが繋がるポイントを探しながらの歩みになります。しゃがみながら道端で
PCと睨めっこしている姿は周りからは滑稽に映りますが、そんなことを気にする余裕は
少しもありません。

なぜなら今回は最低5か所の囲碁処(いごどころ)を回る予定ですから、初っ端から
もたもたしているわけにはいかないのです。
しかし「方向音痴は検索音痴」という格言の通り、歩き回ってダメなやつは地図を見ても
大抵ダメなものです。下手に迷子にならないようにと慎重に調べれば調べるほど
時間を使ってしまい、モタモタのグダグダになってしまいました。

結局、徒歩5分のところを二時間かけてようやくたどり着くことができたわけです。
え、何をどうしたらそんなに時間が掛かるのかって?

以前、東京駅徒歩1分の八重洲の囲碁センターに行くのに一時間半彷徨ったあげく、
交番に道を聞きに行った長谷インにそんな野暮なことは聞かないでください。
これはもう(ポンコツ)仕様です。

(誤字) 「安心安全」の迷子機能を標準装備
(訂正) 不安で危険な「徘徊機能」最新モデル搭載
「方向音痴は検索音痴」 (引用元、長谷語録)

このとき時間はもうお昼時で、最近の猛暑日が続く日本に負けないくらいの暑さです。
台湾旅行は6月29日~7月3日の5日間で約1か月ほど前のことになりますが、
亜熱帯気候の向こうの暑さは1か月前倒しです。

途中コンビニに寄って飲み物を買ってイートインでゆっくり飲もうと思ったら
すでに満席でした。持っているバッグがPC用のそれなので、飲みかけのペットボトルが
はみ出て間抜けな感じになってしまいました。捨てる場所もなく、こんな状態で
訪ねに行くのもなぁと思いつつも気持ち的にはまだ余裕があります。自分の仕様では
二時間彷徨い歩くのは想定内で、むしろ早目に到着できたくらいの気持ちです。

この後は取材を敢行するだけです。
一息ついていざ、台湾棋院へ!

「・・・・・・。」

「いやいや、ここで功を焦ってはいけない。」
「ここは一つ慎重に検索してからにしよう。」

ということで、台湾棋院を目の前にしてネット検索開始。
調べて行くうちに個人ブログを見つけたので見てみると・・・
「台湾棋院にアポなしで行ったら誰も日本語しゃべれなかった。英語は通じたので
何とか見学できました。」
と書いてありました。

いや~そうかぁ日本語通じないかぁ。
いや~そうかぁ日本語通じないかぁ。

分かっていたつもりだけど、この場合どうするんでしょうね。突撃して玉砕するのは
良いとしても、相手の陣地に入って行って眼二つの生きでは辛いんじゃないかな。
囲碁取材しに行って取って喰われて死ぬなら本望だけど、何もできずただ苦しく生きる姿
しか想像できないんだけど。

今思えば、雑居ビルの入り口まで来てネット検索してしまうのはメンタル弱すぎますね。
日本で調べてくるか、もうそのまま行けよって思いますよ、ええ今なら。

というかそもそも意外だったのが、台湾棋院が雑居ビルのアパートの一室みたいな
ところにあったことです。これは後々発覚することになりますが、このときはもういろいろ
間違っていたんですね。

ただこのとき勘違いが後に自分の心を救ってくれる出会いに繋がるとは、運命とは
不思議なものです。薄々おかしいと思っていたのが、ビルの下の看板に「名人子供教室」
って書いてあったことです。このときは子供教室も一緒にやっているのかな、としか
思いませんでした。だって住所が番地までちゃんと合っていましたから。

雑居ビルの一階ではネットが繋がっていますが、中に入れば当然公衆Wi-Fiは
遮断されます。一階の外で必死に言葉の壁を超える策を練っていましたが、ここで一つの
妙案を導き出しました。

「そうだ、翻訳すればいいんだ。いや、でもこれは反則か。」

現地の目的地の真ん前まで来て翻訳しよう、そうしようってどないやねんってなわけですが、
背に腹は代えられません。

この旅行は武者修行の意味合いを兼ねているので、翻訳機とか文明の利器に頼るのは
そもそも発想になかったわけですが、こうなってしまった以上仕方ありません。
ここまで来て言葉の壁を気にして動けないくらいならやるだけやってやろうってなもんです。

このとき打開策を見つけた気になってまたもや楽観思考になっていました。
この一つでもポジティブな材料が見つかるとすぐに楽観思考になるところが、
長谷インの長所であり、やっぱり長所でもあります。

しかし翻訳に関してまったくの無知だったためにできるかどうかはまだ半信半疑でした。
こういうときはすぐにネットで他者の声を調べます。
「台湾 翻訳 オフライン」
くらいで検索して翻訳アプリがあることを確かめます。
これをダウンロードして使うことができれば鬼に金棒、猿に言葉です。

フリーWiFiが繋がるところでインストールしますが、これがめちゃくちゃ遅くて
全然進みません。そもそも台北フリーWiFiの通信速度が遅いのは、先ほど
モタモタしてしまった一因でもあります。後述しますが、宿のWi-Fiは
通信バッチリでインストールもスムーズに行うことができました。

結局ここではオフラインの翻訳アプリをあきらめるしかありませんでした。
代わりにオンラインのグーグル翻訳を試してみましたが、これは普通に使えます。
手帳に翻訳した挨拶文を書いて、いざ5階にある棋院とおぼしき場所へと足を運びました。

今までのくだりは雑居ビルの一階や近くでやっているので、人の出入りがあるたびに
オドオドしながらも、とうとうドアの前までたどり着きました。この階で合っているのは
外のポスターやなんやで間違いなさそうです。扉はマンションやアパートと同じタイプで、
閉まっていました。

このときいろいろおかしいことに気づくヒントがいっぱいあったわけですが、
そんな気持ちの余裕など少しもありません。インターホンを押すか、押さないか。
このときのプレッシャーは文章ではとても表現できません。

駅からこの場所にたどり着くまでに二時間、下でウダウダやっていた時間がおよそ三時間。
計五時間かけて今扉の前に立っているわけです、どういう状況かは察してください。

人生には進むべき時と引くべき時があります。
台湾囲碁旅行の最大の目的であるプロ組織の取材、二日目にして大きな岐路に
立たされています。この扉の先に進むべきか、それとも引き返すべきか。

ここで一つ大事な情報を付け加えておきます。
オンラインの翻訳を外で使うことができましたが、ここはもう雑居ビルの中なので
ネットは使用できません。軽い挨拶文だけしたためて、後は自分のリアクション、力量で
勝負しなくてはならないのです。

「BET or フォールド?」
ポーカー勝負なら賭けるのか、降りるのか?

「ビーフ or チキン?」
勇敢なビーフなのか、それとも臆病者のチキンなのか?

ここで長谷インの人間性、度量そのすべてが天秤にかけられます。

果たして・・・・・・。


既の所で思いとどまり、長谷インは雑居ビルを後にしました。
これは決して臆病者の決断ではありません。
このときの判断は勇気ある行為、戦略的撤退です。

なぜなら・・・・・・。


天の声 「ビーフ or チキン?」
心の声 「No. I am ブタ!」
天の声 「え、どういう意味?」
心の声 「いや、だからブタ(役なし)でした。」

結局、気づいてしまったわけです。
「勇敢か、臆病者か」 「BETするか、降りるか」
それ以前に準備が足りない、何も手がないブタだったことに。

某漫画の大好きなシーンで
「戦場で生き残るのは強者と臆病者だ。勇者は死ぬと相場は決まってる。」
と言っていたのを思い出しました。

何の策も準備もなしに何とかなるだろうで台湾まで来て、いざ現実を目の前にすると
これが答えだったわけです。

しかしこのまま引き下がるほど見下げた果てた男ではありません。
苦虫を噛み潰すような思いをしながら、明日への誓いを立てていました。

「今は引くしかない。一旦宿に戻って態勢を立て直してから
明日必ずリベンジしに戻ってくる!」

この固い決意を胸に秘めて、戦場を後にしました。

明日に希望はあるのか、それ以前に策はあるのか。
長谷インの戦いはまだまだ続きます。

"To Be Continued."

※この文章は制作に5時間を費やしています。(一部文章の消失が三回ほど起こったため)
この先の展開は気長にお待ちください。

 

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