2018/03/07
「この前はすみませんでした。主人にこれとこれを根本さんに
出して頂戴ね、と何度もいっておいたのですが」
87歳のシニアの御宅にうかがう頻度が最近増えている。
先月は9回訪問した。
奥様が外出のときは、事前に冷蔵庫にお菓子を用意してくださっている。
それをご主人はしばしば忘れるのだ。
奥様は笑って言う。
「こんど私がいないときは、『なにか出すのをわすれていませんか』
と主人にちゃんと言ってくださいね」
お宅に伺うようになってからもうすぐ10年がたつ。
まだ「お茶の催促」ができる域には達していない。
だが近いところまではきているかもしれない。
2018/03/03
プロフィール欄に、選挙に出て落選したことが書いてある人がいた。
くすっと笑ったが、これはわかる。
選挙に出ること自体がアピールになる。
だがふつう、履歴書に、「〇〇大学受験失敗」とか
「事業で失敗して〇億損失」と書く人はいない。
挫折は職歴にはあらわれない。
現役時代の華やかな職歴を武器に、企業の顧問につくシニアがいる。
だが定着することは少ないそうだ。職歴至上主義の弊害だ。
大企業出身者が中小企業の顧問となる場合、
舞台の大きさも文化もことなる仕事場で輝けるかどうかは、
知識や華々しい実績よりも、人間力が決め手になる。
いままでいかに挫折を経験して、それを自分の力で乗り越えてきたか。
いま、社会でシニアに求められているのはそんな力や経験なのだろう。
「キャリアよりもキャラ」
そんな視点で選べる場を創りたい。
2018/02/28
今日は東京商工会議所(東商)の中野支部を訪問した。
これから1年間、毎月開催するセミナー
『シニアを活かす目のつけどころ』の後援をお願いした。
担当者と話をしながら、ふと思い出した。
今から15年ほど前、僕は大阪商工会議所(大商)に
毎週のように出向いていた。
大商は当時、全国の商工会議所に先駆けて最大規模の
ビジネスモールをネット上に持っていた。
僕の会社は、商流をネットに乗せる数少ない実例として
紙のネット取引市場を運営していたので、大商と提携して近畿圏をまわった。
最初の1年は出張が30回を越えた。
新しいことをするときは自分ひとりでやろうとせず、
できるだけ動きまわり、広く仲間を募る。
15年前は「商流をネット上に」で大商からだったが、
今回は「シニアの力を社会に」で東商中野支部から始まる。
よみがえる記憶が、いま、自分をワクワクさせている。
2018/02/15
明日は2週間前と同じ中野で講演だ。
規模は小さく10名程度の座談会になるだろう。
前回は「よどみなく話すぎる」といわれた。
初めてもらった指摘だがそのとおりだ。
聞く側の感情の起伏を生んでこそ記憶にねばり、
言いたいことも届く。
さらさら~と理路整然と話してはダメなのだ。
気合が空回り気味だった前回の反省を活かし、緩急をつけて、
「いい加減に」「理路雑然」としたトークを目指そう。
いつものように。
*セミナー『名脇役が生まれる日』
http://ictco.jp/syousai.html?id=294
2018/02/13
87歳のシニアにPC指導をして8年が経つが、最近気がついた。
メモをとらせてはいけない。
コピーペーストや印刷、メール送信など、基本操作を
何度も何度も繰り返し教えてきた。
その都度しっかりメモをとるのを見て安心した。
それは間違いだった。
メモをとったことに安心して覚えない。
そもそもメモをとったことを覚えていない。
だから操作がわからないときにメモを見返さない。
「忘れるために日記をつける」
94歳の作家、外山滋比古氏の至言がある。
だからこういうことになるだろう。
「覚えてもらいたいことは、メモをとらせない」
いままで何で気がつかなかったのか不思議だ。
教える側が覚えておくべき基本といえる。
これももちろん、メモをとらないでおこう。
2018/02/02
明日は中野区産業振興推進機構(ICTOCO)で講演をする。
演題は『シニアを活かす目のつけどころ』。
今まで同じタイトルで話をしたことはない。
中小企業の経営者が30名ほど集まると聞いているが、
これも初めてだ。
こうした場がいただけるのはありがたい。
時間は20分ほどと短いが、準備が簡単かというとそうではない。
「何を言わないか」
いま悩んでいる。
講演前夜、いつもの風景だ。
*中野区産業振興推進機構 http://ictco.jp/about.html
2018/01/23
昨日は前日に続いて87歳のシニア宅でPCと囲碁指導だった。
日曜は富士山に沈む夕陽を眺めながらだったが、
月曜は一変、吹雪の大都会が窓の外にひろがった。
いつも対局が始まり少したった頃、奥様がお茶をいれてくださる。
昨日は桜茶に和菓子だった。
本当は話をしながらゆっくり味わいたいが、
対局中は盤面に気がとられてしまう。
それでも一口食べた瞬間、これはうまい!と思ったのは覚えている。
桜茶の薄い塩味が和菓子の甘味をひきたてていたのも。
しかし味の記憶はすぐに「脳の別フォルダ」に仕舞われる。
あとでそれを取りだすことはめったにない。
対局中、僕は「味のわからなくなる男」になる。
昨日いただいたのは、赤坂にある和菓子の名店、『塩野』の
生菓子であることは知っていたので、あとで調べて驚いた。
15種類ある「1月の和菓子(1個370円)」で
これだけ1個700円(!)の『菱葩餅(ひしはなびらもち)』だった。
説明にはこうあった。
求肥餅の中には赤く染めて菱形に抜いた求肥と密漬けごぼう、
そして優しさの中にもきりっと風味のある味噌餡がはいっている。
いまさらながら昨日の味がよみがえってきた。
あの中にはたしかに優しい味噌がいた。
味噌はたしかにきりっとしていた。
包んでいた求肥はたしかにほっぺたより柔らかかった。
あぁ、かなうことなら碁盤の前ではなくもう一度…。
もうひとつ。
包装をあけたとき、ごぼうを楊枝と思って最初に抜きとり、
しずかにお皿に置いたのを思い出した。
*御菓子司 塩野 http://www.siono.jp/201801.htm
2018/01/18
国が進める「シニア活用」と中小企業の大きなテーマ「採用と定着」。
この2つがぶつかって革新的な流れが生まれるといいが、
よく考えると無理がある。
これだけ世の中の変化のスピードがあがる中で、
「シニアの再教育」という概念が社会にないからだ。
ではシニア向けの教育の場をたくさん作ればいいのかというと、
ことはそんな簡単ではない。
知識・経験ともに十分なシニアがその場に集まる動機がない。
「知識十分・意識不十分」なシニアが大勢いる。
経済的にもそれほど困っていなければなおさらだ。
現状は、シニアの視線が「うちへうちへ」
(仲間うち、自分のうち)と向かっている。
『世代遺産』が伝わることなく、日本中で日々消えていっている。
自分の力をもう一度社会に役立てよう。
世代を超えて伝えていこう。
その気になって頂くためにどうやって火をつけるのか。
いま準備中の『名脇役オーディション』について来月中旬、
中野区の経営者の前で話す機会を頂くことになった。
経営者側への発信に加えて、名脇役候補のシニアへの発信も
仕掛けていきたい。
4月からこれを毎月の定例会に発展させて、
中野から全国に発信していきたい。
2018/01/09
昨日は13回目の石音新年会で31名が集まった。
ネットで仕事をしながら毎回思う。
会うのは楽しい。
10年以上石音で楽しんでいる常連メンバー5人も、
みな80代になってきているが元気そうだった。
ふだんネット上で見ている顔写真が10年前のままだから、
会うと自然と歳月を感じる。
そして今年もまた会えた喜びがこみあげる。
言葉にするのが難しいが
同年代の友人とは会う喜びの質が違う。
石音を始めてよかったと思う瞬間だ。
2018/01/04
うちの母に限らず、加齢とともに
「言いたいことはわかるけど、それじゃないんだよなぁ」
ということが増えてくる。
こちらもいちいちつっこまずに、勝手に「変換」して理解する癖がつく。
2年前に出版したとき、母の第一声を覚えている。
―どうせあなたの本なんて売れないんだから
本屋さんに頼んで『花火』のそばにでも置いてもらいなさい。
これはいいとしても、ものには限度というものがある。
いつだったか、電話のついでに小学一年生の姪っ子(孫)の話になった。
―最近の小学生はすごいわよ。帰宅のときに学校の門を出ると
「いま門を出ました」ってお知らせがお母さんにくるらしいの。
あれなんて言ったかしら。そうだ、きっとJアラートがついてるんだわ。
日本中が真剣に心配しているものとGPSを間違えるとは不謹慎だ。
放置しておくとほかでも言いふらしそうだから、
久しぶりにつっこもうかと思ったが、結局やめた。
この3文字も少ししたらすぐ別のものに置き換わってしまうに違いない。