2017/12/15
高校OB大会に毎回参加してくれたメンバーに中高同窓のY君がいた。
今から33年前、彼と僕は、他の部員よりも遅く囲碁部に入ったので、
既に有段者になっている仲間を追いかける形でお互い切磋琢磨の日々だった。
中学3年、高校1年の2年間は「囲碁しか記憶にない」ぐらい没頭した。
そのかいあってか、高校3年の時に選手3人の1人に入れるかどうか
ギリギリの棋力にまで到達した。
選手候補の高段者が20名を数える囲碁強豪校だったので
まず母校で選手になるのが大変だったのだ。
そしてリーグ戦の最終戦、最後の1席を争う形でY君と打つことになった。
結果は僕がギリギリの勝利を収めた。嬉しさと申し訳なさが同居する
不思議な気持ちを初めて味わった。対局後の彼が予想以上に淡々と
していたので余計印象に残った。
それから時が流れて、僕が石音を始めたことを知ると彼はすぐに
会員になってくれた。仕事が忙しく常連メンバーとはならなかったが
毎年新年にじっくり2人で打つのが定例となった。
勝負は五分と五分で、勝ったほうはその年を気分よくスタートできた。
今から4年前のクリスマス、突然の一報に言葉を失った。
彼が酔ってホームから転落して亡くなったのだ。
数日前の、新年もまた打とうという確認メールのやりとりが、
まだ受信トレイのすぐ見れる場所に残っている。
すぐには、彼とはもう打てない、という事実を受け入れられなかった。
僕はその夜、石音から彼との棋譜を全て取り出して並べた。
そうしないと心のざわめきを押さえられなかった。
電子音だから全部同じ音のはずだが、やはり30年来の棋友である
Y君の石音は、僕にはたしかに違って聞こえた。