2017/12/31
今回の琵琶湖の旅で、数日前から温めていたひとつの企画があった。
石音常連の住職にアポなしで訪問するというものだ。
もし会えたら昨夏、両親や弟家族、妹家族10名で京都西本願寺を
訪れた際以来の再会となる。住職は西本願寺で33年勤務経験があって、
普段見ることができない国宝の能舞台や飛雲閣を案内してくださった。
ここ琵琶湖のそば、彦根の南にある報恩寺は、開基から400年以上の
歴史を持つ大きなお寺で、住職はその11代目だ。
午後2時前に到着したがお寺には誰もいない。
隣の家の呼び鈴を鳴らすも反応がない。残念だけど留守かな。
そう思ったときお堂のほうから声がした。
「やぁほんまに、ほんまに根本さんや。えらいこっちゃ」
笑顔いっぱいながら突然で驚いた様子だ。
また会えてよかった。僕もほっとした。
すぐにお堂の中に案内してくださった。
「そうや、ちょっとこっちに来て下さいな」
そこはお堂の奥にある、住職の“秘密基地”だった。
三畳ぐらいの小部屋の中央に石油ストーブがあり、
その上でやかんが蒸気を出している。
小さな机の上にはパソコンがあって、せっかくなので
私に石音の操作方法について聞きたいということだった。
「いまちょっとだけ5割を超えとるのですよ」
パソコンを立ち上げながら嬉しそうだ。
住職の現在の戦績は2336勝2298敗。
1局1時間、10年かけて積み上げてこられた。
パソコンの操作の簡単な説明をしたあと、
つれと一緒にこの秘密基地でしばし歓談した。
「それは世の中には色々な人がおるけど、会うべきひととは
会えるように出来とるのですわ」
偶然の再会をこう表現してくれた人は今までいなかった。
石油ストーブの間近で冷えた身体が暖まってきたが、心も熱くなった。
住職自らたててくださったお抹茶と手作りの羊羹を頂きながら、
僕はこの至極のひとときを過ごす幸運に感謝した。