2018/01/23
昨日は前日に続いて87歳のシニア宅でPCと囲碁指導だった。
日曜は富士山に沈む夕陽を眺めながらだったが、
月曜は一変、吹雪の大都会が窓の外にひろがった。
いつも対局が始まり少したった頃、奥様がお茶をいれてくださる。
昨日は桜茶に和菓子だった。
本当は話をしながらゆっくり味わいたいが、
対局中は盤面に気がとられてしまう。
それでも一口食べた瞬間、これはうまい!と思ったのは覚えている。
桜茶の薄い塩味が和菓子の甘味をひきたてていたのも。
しかし味の記憶はすぐに「脳の別フォルダ」に仕舞われる。
あとでそれを取りだすことはめったにない。
対局中、僕は「味のわからなくなる男」になる。
昨日いただいたのは、赤坂にある和菓子の名店、『塩野』の
生菓子であることは知っていたので、あとで調べて驚いた。
15種類ある「1月の和菓子(1個370円)」で
これだけ1個700円(!)の『菱葩餅(ひしはなびらもち)』だった。
説明にはこうあった。
求肥餅の中には赤く染めて菱形に抜いた求肥と密漬けごぼう、
そして優しさの中にもきりっと風味のある味噌餡がはいっている。
いまさらながら昨日の味がよみがえってきた。
あの中にはたしかに優しい味噌がいた。
味噌はたしかにきりっとしていた。
包んでいた求肥はたしかにほっぺたより柔らかかった。
あぁ、かなうことなら碁盤の前ではなくもう一度…。
もうひとつ。
包装をあけたとき、ごぼうを楊枝と思って最初に抜きとり、
しずかにお皿に置いたのを思い出した。
*御菓子司 塩野 http://www.siono.jp/201801.htm
2018/01/22
僕は2歳から4歳を山形の米沢で過ごした。
冬は豪雪で家が埋まり、2Fから出入りしていたそうだ。
かすかな記憶がある。
遊んでいる最中、雪の穴に落ちてしまって父に助けられた。
恐らく大きな声で泣いたにちがいない。
写真や伝聞で作られた記憶もあるだろうが、
楽しい最中に突然起きた「悲劇」は記憶の底にたしかにある。
今日、久しぶりに東京は雪景色となった。
二子玉川に住む5歳と7歳の2人の姪は、
さっそく自宅バルコニーで楽しんだようだ。
妹のほうの右足を見ると、この記憶は僕のよりも
もっと確かなものとして刻まれるだろう。
2018/01/20
以前、鎌倉文学館で鎌倉ゆかりの文豪の直筆原稿を
見る機会があった。
芥川龍之介、夏目漱石、川端康成、与謝野晶子。
どの原稿にも削除、挿入、書き直しなど、
苦闘のあとがはっきり浮き出ていた。
完成原稿でこれだとすれば、没原稿はどれほど
クシャクシャになって部屋を埋めつくしただろう。
書いたものを丸めるとき、頭をよぎるふがいなさ、
口惜しさはいかほどだっただろう。
ふと思う。
100年前の作品がいまだ多くの人に愛されている。
では100年後に今の作品が同じように読まれるだろうか。
名作として評価され読まれる作品の量は限られる。
“入れ替え戦”であの文豪たちに勝てるだろうか。
書くという作業が、パソコンに向かって行うのが
あたりまえになって20年が経った。
いま忘れられつつある「紙に書く」が
名作が輝く理由のひとつだとしよう。
半歩でも近づくためにやるべきことは決まった。
明日から僕も「紙に書く」をもう一度日々の営みに戻そう。
このブログは別として。
2018/01/19
今から10年ほど前のことだ。
毎年夏にアメリカ西海岸サンディエゴからやってくる
2人の姪っ子が、
―アンクル明、あーそーぼー!
と僕の部屋に入ってきた。
当時2人は4歳と5歳。僕はちょうど会員と石音で対局中だった。
遠くから妹の声がした。
―華(hana)、奏(kana)、
アンクル明はお仕事中だから邪魔しちゃだめよ。
―えーっ、だってアンクル明、いまゲームしてるよ。
あの時のショックはまだ覚えている。
そうだよな。まだわからないよな。
でも大きくなったらわかるよ。大きくなったら。
昨日、16歳の華(hana)から1枚の写真が送られてきた。
彼女はいま身長172cm。たしかに大きくはなった。
だが写真をよく見ると…。
あの時自分に言い聞かせたのは、間違いだったかもしれない。
2018/01/18
国が進める「シニア活用」と中小企業の大きなテーマ「採用と定着」。
この2つがぶつかって革新的な流れが生まれるといいが、
よく考えると無理がある。
これだけ世の中の変化のスピードがあがる中で、
「シニアの再教育」という概念が社会にないからだ。
ではシニア向けの教育の場をたくさん作ればいいのかというと、
ことはそんな簡単ではない。
知識・経験ともに十分なシニアがその場に集まる動機がない。
「知識十分・意識不十分」なシニアが大勢いる。
経済的にもそれほど困っていなければなおさらだ。
現状は、シニアの視線が「うちへうちへ」
(仲間うち、自分のうち)と向かっている。
『世代遺産』が伝わることなく、日本中で日々消えていっている。
自分の力をもう一度社会に役立てよう。
世代を超えて伝えていこう。
その気になって頂くためにどうやって火をつけるのか。
いま準備中の『名脇役オーディション』について来月中旬、
中野区の経営者の前で話す機会を頂くことになった。
経営者側への発信に加えて、名脇役候補のシニアへの発信も
仕掛けていきたい。
4月からこれを毎月の定例会に発展させて、
中野から全国に発信していきたい。