2018/08/24
あやうく忘れるところだった。20時少し前に電話した。
まだ寝るには少し早いはずだ。
「いよいよ節目の歳に突入したね。おめでとう」
「あら、遅いわね。朝から“グーグルハングアウト”で
3人は連絡してきたわよ」
この夏、妹に手とり足とり教わって、スカイプに続く
もう一つの武器を手にした母は、ちょっと得意げに
その名を口にした。
長めのカタカナを正確に言えたのには驚いた。
先日も焼肉鉄板の新兵器「ザイグルボーイ」を数日間、
「ザイール、ザイール」と連呼していた。
3人とはアメリカに住む妹とその娘たちだ。
「Hanaちゃんがね、
『おばあちゃん誕生日おめでとう。75歳に見えない、35歳に見えるよ』
といってきたのよ。だからね、
『あらかわいいわね。ありがとう』
と返事しておいたわ」
女性の歳を40も下に言うのは、日米通じてなかなか
お目にかかれないが、それを真に受けるのはさらに珍しい。
今度Hanaに会ったら、そういう時は10歳ぐらい下を言うもんだよと
「日本の常識」を教えておこう。母の矯正はもう手遅れだが。
うちは昔、夏の最後が「バースデーウィーク」だった。
母の誕生日の5日後が僕でその翌日が妹、と5人家族のうち3人が
1週間に入っている。
昨年の僕の誕生日のことだ。
母から電話はあったのだが、いつものマシンガントークで
自分の近況報告と僕の健康伺いを済ませたらそのまま電話がきれた。
軽くずっこけた。
翌日妹に指摘されて気づいたのだろう。
2日続けて電話があった。
「あらあなた、昨日誕生日だったのね。おめでとう」
そんな1年前のことを1mmも覚えていない母は、今年、
「当日」に電話した僕に第一声、「遅いわね」と言った。
来年の夏の終わりがまた楽しみだ。