2017/11/25
タイトル戦で記者が現場で書くものといえば、
新聞掲載の観戦記事と相場はきまっている。
だがそれが芥川賞を獲ったとすれば、刮目に値する話だ。
将棋タイトルの最高峰、名人戦の舞台が高野山の金剛峯寺に
セットされたのは、昭和23年のことだった。
29歳の升田名人に24歳の大山が挑戦する名人戦の担当だった
毎日新聞学芸部副部長は、将棋そっちのけで決戦の舞台の2階で
小説を執筆していた。
『闘牛』は2年後、芥川賞を受賞した。
小説家・井上靖は、高野山の将棋名人戦で誕生したのだ。
まるで高尾―井山の囲碁名人戦で、担当記者、又吉直樹が
『火花』を書いていたみたいな話だが、それを知って以来、
僕の中で彼の著作を読んでみようというボルテージが一段あがった。
いつかいつかと思いながら、自分の中でずっとそのきっかけを待っている本。
数えたことはないが、数十冊はあるだろう。
その一冊、『天平の甍』にじっくり向き合ってみた。
年末に琵琶湖周辺を歩くつもりなので、次は『星と祭り』も読んでみたい。