「この前はすみませんでした。主人にこれとこれを根本さんに
出して頂戴ね、と何度もいっておいたのですが」
87歳のシニアの御宅にうかがう頻度が最近増えている。
先月は9回訪問した。
奥様が外出のときは、事前に冷蔵庫にお菓子を用意してくださっている。
それをご主人はしばしば忘れるのだ。
奥様は笑って言う。
「こんど私がいないときは、『なにか出すのをわすれていませんか』
と主人にちゃんと言ってくださいね」
お宅に伺うようになってからもうすぐ10年がたつ。
まだ「お茶の催促」ができる域には達していない。
だが近いところまではきているかもしれない。