石音インストラクターブログ

2016/03/19

囲碁, 長谷俊インストラクター

長谷インのグローバル囲碁旅行記 ~台湾編その8~

皆さんこんにちは。

囲碁に無限の可能性を感じている長谷インです。
アルファ碁vs李世ドルの対決はついに決着がつきました。
最後まで人類の最高峰としてAI(人工知能)に真っ向勝負を挑んだ李世ドルは
偉大な棋士です。今後はAIを利用して人類がどれだけ高みに近づけるのか、
それともAIが神様になってしまうのか、まだまだ目が離せません。

〜前回のあらすじ〜

やっとの思いで囲碁取材をすることができた長谷イン。
99パーセントのご厚意と1パーセントの勇気で無事に難関を乗り切りました。
この先にはまだどんな壁が待ち受けているのでしょうか!?


台湾編その8 「正直、可愛かった」

海峰棋院を後にした長谷インのテンションはすこぶる快調であった。

ルンルルン♪ルルンルルン♪

初めてまともに人と会話できたので、それはもう気分爽快ですよ。
このままのテンションでいざ台湾棋院へ、Go!

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「うっ、また道が分からなくなった。」

そうなんです、またなんです。
誠にアホで申し訳ありませんが、丸い交差点に差し掛かり、またどの方向から
来たのか分からなくなりました。本当ならまっすぐ前に進めば、誰でも駅に着く
はずなんですよ。それがデカくて丸い交差点なもんだから、ルンルン気分で
歩いていたらいつの間にか方向感覚を失いました。

“どこまでアホなんだよ、学習しろよ。”

今どきAI(人工知能)だって学習しているのに、まったくもう原人レベルで
学習能力がありません。またこの後も不毛なウロウロ状態が続くわけです。
こちとら時間がないし、暑いし、疲労がたまって死にそうです。

吉野屋、海峰棋院でだいぶ回復したとはいえ、それはあくまでも気力の充実
であって、体には確実に連日のダメージが蓄積されています。

台湾での行動といえば、「迷子」「検索」「翻訳」のほぼこの三つだけですからね。

碁会所で打ったり、棋院で取材している時間はこれらに比べると致命的に短いわけです。
ヘトヘトに歩きながら、コンビニを見つけては飲み物を買って、また位置検索を
しながら電柱の住所と照らし合わせての繰り返しです。

今思うとすごいですね。

よく迷子になれるし、深みに嵌まるし。何度も言うように、台北市内の道はタテ、ヨコ
で非常に分かりやすい造りになっています。そう、迷う道理がないからこそ
迷ってしまう。一人で何とかできそうだからこそ、諦めが悪くなり、かえって状況が
悪化しています。

もうここの記憶は定かではありません。
どうやってこの無限地獄を抜けだしたのか・・・?

旅行期間中はほぼこのジレンマの繰り返しで、さすがに覚えていません。
というより、適当に歩き回っていてもどこかの駅にぶつかるはずです。
(それでもここでまた2時間くらいは歩き回っていました。)

どうにか駅に着き、そこから台湾棋院の最寄り駅まで移動します。
地下鉄は簡単ですね、だって方向間違っても一駅のロスで済むんですから。
でも最寄り駅からまたもや迷いました、もう何回目だよ、何なんだよ。

昨日来たばかりなのですが、そもそも出口を変えると方向性が分からなくなります。
確か降りた駅も若干近い方に変更していました。余計なこと(ショートカット)を
しようとして、全然時間短縮になっていないところが“長谷インクオリティ☆”です。

さて、何だかんだ(どうにかこうにか)着きました。
もう運動部の合宿か、ってくらい歩き回っています。
不本意ですけど。

さて、着きました。着きましたよ。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「行くか・・・、行かざるか・・・。」

いやいや、ここまで来て行かない選択肢はありません。
ここは行く一手です、行ってから考えるべきところです。
しかし囲碁では目を瞑って切るところも、現実ではそう易々とはいきません。

「行って死ぬのなら、それは本望だ。」

「ただ生き恥を晒した上に、おめおめ生還でもしたらどうする!?」

「行くか・・・、行かざるか・・・。」

そう、これは己との自問自答です。すべての答えを心の内に秘めているはずです。
自らに問い、導き出した答えとは・・・!?

“行こう、たとえ生き恥を晒して生還したとしても。”

大いなる決断の元に、今まさに勇気の一歩を踏み出します。
越えられなかった昨日までの壁を今、越えるために。

「・・・・・・。」

「ん・・・?」

「あ、扉が開いてる。」

そう、昨日までと一転して扉が開いていました。
雑居ビル5階のフロアにある二つの部屋の扉が両方開いていました。
その向こうにはさらにガラス戸があります。

「よし、これなら行ける、行けるぞ!」

「いや・・・、え?!」

「何か物凄く黄色い・・・。」

そうです、左の部屋は事務室的なことがすぐに分かりましたが、右の部屋は一面
黄色い壁紙に覆われています。恐る恐る、ガラス戸を開けて中を覗いてみました。

中の2人「!?」

長谷イン「に・・・你好。」(小声)

女の子「日本人ですか!」

長谷イン「!?」

不意を突かれてびっくりしました。
ひと目で日本人だと分かったらしく、日本語で話しかけてくれました。

※ここで得意の挨拶文を手渡す。

おじさん「どうぞ、中のほうへ。」

この方は謝さんといって、ここの責任者の方でした。
日本語は習得率5割くらいで、難しい話はできませんがコミュニケーションが
取れるレベルです。いきなりの訪問でびっくりされていましたが、何とか取材したい旨
を伝えることができました。

長谷イン「突然のことで申し訳ありませんが、ぜひ台湾棋院を見学させてください。」
謝さん「台湾棋院ならここから3軒先の向かいにあります。」
長谷イン「!?!?」

そう、そうなんです。

実はここは「名人児童棋院」という子供教室だったのです。
謝さんが窓際から台湾棋院の位置を示してくれましたが、
そこはすぐ向かいにありました。
どうしてこのような勘違いをしてしまったのでしょうか?

間抜けといえば、大いに間抜けな話です。事前に台湾棋院の場所を調べるときに、
「某知恵袋」の回答を参考にしてしまったのです。

しかもそれは、「台湾棋院」と打ってウェブ検索したものですが、その回答には
一言も台湾棋院とは記されていません。要するにネット情報をよく見ずに
鵜呑みにして、盛大な勘違いをしてしまったのです。

さて、どうします?皆さんなら。

子供教室を訪ねて、「台湾棋院を取材させてください。」と挨拶文にも記載して、
口頭でもはっきりと言ってしまいました。
しかも親切に場所を教えてくれて、さてどうしたものか、といった状況です。

「・・・・・・。」
「あの、ここも見学して行きたいのですがよろしいでしょうか?」

はい、成長しましたよ、図々しくも。
やはり日本語でコミュニケーションが取れるうえに、乗りかけた船ですからこの機を
逃す手はありません。海峰棋院の楊さんほど日本語は達者ではありませんが、
コミュニケーションが十分に取れるのは本当に有り難いです。

というか、嬉しくてここまで割とハイテンションで捲し立ててしまっているんですよ。
もともと喋るほうですから、通じるとなると鬱陶しいくらい自分の話をしてしまいます。
そんな状況で「勘違いでした、失礼します。」なんて言いたくはありません。

相手のご厚意に甘えて、Let’s取材開始です!

「名人子供教室」
・170人の生徒を抱える囲碁塾。
・将来のプロ棋士を育成している海峰棋院、台湾棋院とは違い、学習塾である。
・数名のプロ棋士とアマチュア棋士が指導に当たっている。
・30級〜7段までの段級位があり、アマチュア講師は5〜7段である。
(7段の講師は27歳)
・分院といって、300人、200人、170人(※古亭)、150人規模の同じ
教室が台湾に14か所ある。
・台湾の有名な囲碁教室は「名人子供教室」と「中華棋院」(分院4つ)、
「長清教室」(分院4つ)である。
(ほかにも囲碁 教室はある。)
・台湾では14年前に比べると子供の囲碁人口が衰退している。
(囲碁は難しくスポーツのほうが人気がある。)
・14年前はちょうど「棋霊王」(ヒカルの碁)が台湾でも流行った時期である。
・名人子供教室は囲碁人口と反比例して生徒数を増やしている。
(新たに分院したところでは300人の生徒を抱えている。)
・古亭の名人教室は碁盤が12面の二部屋で、ほぼ毎日午前、午後で子供たちが
出入りしている。
・内装は真っ黄色。
・受付はアルバイトの子が2人いる。(20歳の大学生と30歳の社会人)
・謝さんは24歳で囲碁を始めて、現在はアマ6段。

※古亭とは今取材している名人児童棋院のこと。(本院)

いろいろとお話を聞くことができました。
しかし、やはり詳しく聞こうとすると謝さんがうまく表現できない単語が出てくる
ようです。そこでまたしても図々しく、携帯をWiFiに繋いでもらいました。
パスワードを教えてもらったので、部屋の中でネットが繋がる状態です。

晴れてオンラインでの音声翻訳(※ほんやくコンニャク)を使えることになり、
さらにテンションが上がります。とはいえ、まだまだ文明の利器は想像を超えるほど
万能ではありません。特に敬語を多用すると、変換がおかしくなります。
また、一般的な会話のできる謝さんと(日本語が分かる)大学生の女の子の前で、
日本語を音声入力するのはこっぱずかしいものがあります。
(※ドラえもんの道具)

大学生の女の子は元気よく発音も良かったので、だいぶ好印象でした。
おそらく学校で習ったであろうテキスト的な受け答えが主でしたが、わかる範囲で
うまく喋っていたのですごく日本語が上手に感じました。
(コミュニケーション能力が高い)

最初、だいぶ若く見えたので(この子小学生か?)と思わず聞いてしまいました。
音声翻訳で「彼女は歳いくつですか?」と聞いたら、細かいニュアンスが伝わらずに、
お互いに顔を見合わせて「?」となる。

翻訳機「******」(歳いくつですか?と聞いたつもり)

女の子「何を言っているのか分からない・・・。」(困惑顔)

長谷イン(しまった。失礼なことを聞いてしまった。)

謝さん「20歳で大学に通ってます。」

長谷イン「そうでしたか。小学生かと思ったもので・・・。」

初めは全然伝わらずに困惑していましたが、どうも音声翻訳の訳し方がまずかった
ようです。それ以前に女の子の歳聞いて、あげく小学生に見えたとか無礼の上塗りを
する始末。当の本人は笑顔で「嬉しい・・・とびっくり!」と言ってくれていたので、
救われました。

もう、二人ともすごく笑顔で対応してくれたので、楽しい時間が過ごせました。
優しくされるとまた無礼な発言が出てしまうのは、長谷インの悪いくせです。

長谷イン「あなたは囲碁をどれくらい打てますか?」

女の子「うーん、ルールが分かるくらい。ここでは2〜30級くらい。」

長谷イン「囲碁教室で働いているのは何のためですか?」

女の子「えー、お金のため。あと子供好きだから。」

もう、こちらのアホな質問にも正直に答えてもらいました。
ちなみに昨日勇気がなくて入れませんでした、って言ったら二人とも笑っていましたね。
よくよく考えたら、扉が閉まっていたので休みだったのかもしれません。

この日はもう夕方になっていたので、残っていたのは謝さんと受付の子2人だけでした。
アマ5段のインストラクターの男性があとで来ましたが、爽やかで
カッコ良かったですね。ここのスタッフは全員すごく人当たりが良かったです。

最後に一緒に写真を撮ってくれて、いい記念になりました。
拙い中国語で「再见。」(さようなら)と挨拶して、名人子供教室をあとにしました。

「ありがとうございました。」

「バイバイ!」(手を振る)

女の子がお辞儀して手を振ってくれたので、コミュ障なりに笑顔でバイバイしました。
謝さんもすごく一生懸命日本語で対応してくれたし、女の子も明るいしすごく良い
雰囲気の教室でした。

長谷イン「また台湾に来たら寄ってもいいですか?」

女の子「もちろん!」

よし、またいつか来よう。

三日目はこの後、士林駅近くの夜市に行きました。
ここでもいろいろ書くネタありますが、これくらいにしておきます。
また「翻訳、迷子、ご飯」の3拍子ですからね。(結局ほとんど食べれませんでした。)

そうそう、台湾棋院にも寄りましたが、もう時刻が遅かったので閉まっていました。
4日目、明日はもう一つの棋院と共に台湾棋院へ最後のリベンジになります。

(明日へとつづく)

 

PAGE TOP