〜次々回のあらすじ〜
台湾三日目にしてようやく神の味、食の神髄を知ることができた長谷イン。
さらに海峰棋院の若手プロ棋士に囲まれたり、学習生と一戦交えるなど怒涛の展開が
繰り広げられることに。はたして次の台湾棋院では無事リベンジを果たすことが
できるのか!?
皆さんこんにちは。
時をかける青年、長谷インです。
常々、時を駆けたいと思いを馳せながらも、時間ばかり掛けている今日この頃です。
今回は4日目後半へタイムリープします。
台湾編その5「魔境九份、地獄へのいざない」
ようやくすべての任務を終えた長谷インのHPは限りなく0に近づいていた。
ここに至るまでの苦難、苦闘の数々。
彷徨い歩き、幾度となく過ごした永遠の時間。(計20時間以上)
検索して、翻訳して、接続不良のネットを繋ぎ直すのにどれくらい手間を費やしただろう。
さあ、もう休もうか。
すべては終わった。
あとは明日の帰国を待つばかり。
"戦いの 終わりを告げし 黄昏の 陽が沈むのは 我が心なり"
グローバル囲碁旅行記 〜台湾編〜 "完"
って、おいおい。そんなわけないでしょ?!
台湾まで来てミッションコンプリートして「はい、さようなら」って
そりゃないよ、不二子ちゃん。
そりゃ行く前は「他のことには興味ありませーん!」って感じだったけど、
ここまで来たら普通に観光したいわ。
もう取材(のために歩き回るの)が辛くて辛くて終わったら絶対観光してやるんだって、
すでに二日目から思ってましたよ。しかし、そうはいっても予想以上に時間が掛かり過ぎて
しまったのも事実。台北101のタワーを目視したときは上りたい気持ち半分、
諦め半分でした。
時間的にもう九份(キュウフン)と故宮博物院に行けるかどうか。
もう噂の夜市には行ったし、台北101も遠目に見たのであとはこの二つだけ。
時刻はもう18時目前。
いくら九份の夜景が綺麗といっても行って帰って来れるかどうか微妙なところ。
忠孝復興からバスで1時間半の道のり。
管理人さん「九份の最終バスは確か21時台だったから気を付けたほうが良いですよ。」
今から忠孝復興へ戻ってバスに乗れば19時半に現地へ着ける。
「行ける・・・いや、行くしかない!」
いざ、千と千尋のモデルとされている聖地へ。
この機を逃すわけにはいかない!
ザッザッザッ。
ザッザッザッ。
さて、ここでQuestionです。
「ザッザッザッ。」この擬音は何を表しているのでしょうか?
答えは簡単。長谷インが彷徨い歩いている音でした\(^o^)/
って、おいおい。
そんなわけないでしょ?!
忠孝復興駅のすぐ近くにバス停があるんですよ?
管理人さん「電気屋の前だから探してみて。」
今朝、聞いたときにはすぐにでも見つかるような口ぶりでした。
というか、そもそもネットでバス停調べてるんだけど。
そしてないんですけど。
時間もないんですけど。
どうしようもないんですけど。
諦めますか? Yes or No?
No! I go to jiu fen.
このときは本当に困りました。
確かに載っているはずのバス停に九份行きの番号がありませんから。
10分、20分、30分・・・。
ただでさえ時間がないのに、無情にも時の流れを止めることができません。
40分、50分、一時間・・・。
ん!?
んん?!
こ、これは・・・。
「九份行きのバス停は101年に場所が変わりました。」
いやいやいや、マジっすか。
地図通りに移設した場所へ行ってみると30秒足らずで着きました。
そりゃないよ、不二子ちゃん。
さらにダブルショックだったのは、101年という数字です。
2010年だったら「010年」っていう表記になるはずだし、いったい・・・。
どうやらこれは「中華民国暦」のようです。
中華民国暦101年は西暦2012年、平成24年に当たります。
いや〜とんだ見損じでしたね、しかし。
駅の周りをですよ。
一時間もバス停を探して歩き回りますかね、普通。
場所が分かれば30秒って、そんなアホな。
ちなみに最終日も空港行きのバス停を探して忠孝復興駅の周りを一時間以上歩き回りました。
これが噂の長谷イン☆クオリティーです。
このとき限界に近づいていた体力がついに空になりました。
もう一歩も動けましぇーん、ってなもんですよ。
本当にこの4日間死ぬほど歩いたあげく、さらに駅の周りをぐるぐる歩き回るわけ
ですから精神的にも限界です。
ようやくバスに乗ることができたのは19時頃でした。
バスの中では今後の台湾囲碁界の行く末とかDNAのこととか考えていました。
"人はDNAを運ぶ船"・・・って、そんなこと考えだしたらもうお終いですよ!
思考力がこの上なく下がっていて、延々とよく分からないことに思いを巡らせていました。
バスに揺られながら、疲労のピークで集中力が切れています。
「あれ、今どの辺だっけ?」
街を過ぎて山道をどこまでも登っていく中、言いようのない不安がこみ上げてきました。
「これは・・・通り過ぎたらおそらく戻れなくなる。」
九份が終点間近であることしか確認しておらず、前後の場所はよく見ていませんでした。
また疲れて一番後ろに座っていたので、次のバス停の表示も見えません。
(このときは表示されないものと思い込んでいました。)
確かネットには「多数の観光客が降りるから、それで分かります!」とか
書いてあったけど・・・。山道を登る中、一人また一人と乗客が降りて行きます。
「結構降りて行ったけど、大丈夫だよね?」(震え声)
何もない山道から人気が出てきて、まさにここら辺かというところまで来ました。
このとき途中で乗ってきたサラリーマンの男性が隣にいて、ちょっと降りづらく
なっています。しかし、ここ2、3回の停車で明らかにまとまった人が降りて行きました。
ぐぅ・・・ここまでか、いやここか!
えい、やあ!
長谷インは英断を下し、バスから飛び降りました。
(おそらく一つか二つ過ぎてしまったけど、山道を降りて行けば大丈夫のはず。)
確認のため、バス停の表示を確認しました。
「・・・・・・。」
「あれ、まだ全然手前だった?」
そこにいたおじさん「*******!?」
(脳内翻訳)「君!どこに行きたいの?」
長谷イン「ここに行きたいんですけど・・・。」
おじさん「*******!」
(脳内翻訳)「そこはまだ先だよ。もうすぐ次のバスが来るから待ってな!」
長谷イン「谢谢。」
今にして思うと、普通に向こうの話が聞き取れた気がするんですよね。
このときはもう"言葉じゃない何か"で会話ができていた気がします。
台湾4日目にしてようやく環境に順応できた長谷イン。
そうこうしているうちに、九份行きのバスが来ました。
おじさん「おいおい!手を上げなきゃ止まらんよ。」
長谷イン「(;゚Д゚)」
バッ!
プシュー。
長谷イン「谢谢!」
何とかおじさんに助けられて、またバスに乗ることができました。
今度は間違えないように一番前の席へ。
次のバス停はちゃんと表示されていました。
そもそも初日にバスで忠孝復興に向かったときも表示されてたし、
そういえばまだ一時間半も経っていませんでした。
もうね、あれですよ。
体力と思考力が落ちて、通常の行動が取れなくなっています。
精神的にもとっくに限界を迎えています。
だが、しかし。
千と千尋のモデルと呼ばれし聖地を見るまで、一歩も引くことはできません。
散々地獄のようなミッションを終えた今、最後に楽しみがあってもいいじゃないですか。
山道を越えた先にはまた街があって観光客らしき女の子たちが乗りこんできました。
おそらくバスの直行便ではなく、途中まで電車に乗ってきたのでしょう。
目的地が近くなってくると、一人の女の子が前のほうへ来ました。
女の子「*******」
(脳内翻訳)「九份ってまだですか?」
長谷イン「あ、あう・・・あ、あ。」
(喋れませんのバッテンポーズをしながら)
長谷イン「ジャパニーズ。」
女の子「チッ。」
たぶん意図的に舌打ちしたわけではないんでしょうね。
「チュッ」くらいのガムでも噛んでいるような音でしたから。
しかしこちとら凄まじいほど神経が研ぎ澄まされているわけですよ。
複数組のリア充(^_-)-☆な女の子たちとは相反して、一人でタイムリミットへの
不安と戦っているわけです。到着時刻が20時半だとすれば、リミットは一時間になります。
結局、その子は運転手さんに聞いていました。
自分もその子達と同じところに降りれば良いので、助かったといえばその通りです。
見た感じ韓国、もしくは中国の子たちでしょうか。
メイクやファッションが日本と同じで、まったく見分けが付きません。
そうこうしているうちにようやく九份に到着しました。
ついに待ちに待った千と千尋の聖地に到着です。
ただ長谷インの胸の内には、筆舌に尽くし難い不安が溢れていました。
もしかしたら、いや・・・。
自分の人生はここで終わるかもしれない。
そのときは具体的にそう思ったわけではありません。
ただ蒸し暑さも相まって、全身に嫌な空気が絡みつくのを感じました。
"時僅か 逸る気持ちに 相まって 暑さと共に 不安を纏う"
この先にいったい何が待っているのか。
果たして長谷インは魔境の巣から無事に帰ることはできるのか?
次号へ続く。