2015/05/17
吉森弘太郎インストラクター, 囲碁
囲碁って、曖昧なゲームなんです。
みなさんこんにちは。インストラクターコラム、2周目の
トップバッターになってしまいました。吉森弘太郎です。
今回のテーマは「私が遭遇した事件」
ということで、前回は全く囲碁と関係ないグルメレポートになって
しまったので、今回は囲碁の話をします。
みなさん、囲碁を打っててトラブルになったことはあるでしょうか?
特に多いのが、終局時のトラブル。
まだ地になる手が残っているのに終局にして境界線が分からなく
なったり、整地していたらどっちの地か分からなくなったり、
うっかりダメを詰めたらアタリになって・・・
そうしたトラブルが多い原因の一つに、「囲碁のルールの曖昧さ」
があります。
基本的に、「お互いの合意」があれば、だいたいオッケー。
なんともゆる~いルールです。
数あるゲームの中でもルールの曖昧さはトップクラス。
まあ、性善説みたいなもので、最近は徐々にルールが整えられてきて
いますが、そのゆるさもレトロで囲碁っぽくて素敵なようで
捨てがたいような・・・
昔の感じってなんかいいですよね~。
でも、曖昧でトラブルが増えるのもなんですから、ルールが整えられる
のは良いことです。
整備されたルールの一つに、
「ダメを最後まできっちり詰めてから終局とする」
というのがあります。
これ、以前は、
「お互いに終局と認めたらそこで終局(ダメ詰めが残っていても)」
という感じでした。今でもそうしているアマチュアは多いのでは
ないでしょうか?このルールが私も遭遇した事件に深く関係して
くるのです。
かつてプロの対局でもこのルールでトラブルがありました
(確か 王立誠 VS 柳時薫 の棋聖戦)。
ダメ詰めの時に柳先生がお互い終局を認めたと思ってダメを詰めている
時に、うっかり手が残る形に詰めたら、王先生は終局を認めてないと
主張して手をつけたのです!
結局王先生の主張が通ったと記憶していますが、タイトル戦での出来事
ということもあって物議をかもし、それで今の「ダメを最後まで詰めて
終局」のルールができました。
私が大学一年の頃、学生王座戦関東一次予選の準決勝、終局直前に
下の図の形が残っていました。
黒からうまく打てば白地が一目減るのですが(考えるところが少ない
&そんなに難しくないので、考えてみましょう)、相手の方に
「終わりですね?」と聞かれました。
(当時はまだ改善前のルールでした)
実はこの時形勢が猛烈に細かく、白が手入れすれば白の半目勝ちでした。
「いや、終わりじゃない」と言ってしまえば、相手は恐らく気付いて
手入れし、相手の勝ちになるでしょう。
といって、終わりを認めれば、もうそこに手をつけることができなく
なります。私は逡巡し、取れる行動は一つしかなかった。
微動だにしないこと。
相手も不思議に思ったのでしょう。首をひねりながら他のところへ
打ちました。
そして私が手をつけると、相手は「あっ!」と叫びました。
勝敗が決まった瞬間でした。
この碁を拾った私は決勝も一目半勝ちで一次予選を抜けることが
できました。(二次予選はボコボコにされましたが・・(^_^;))
もう今ではあまり出会えない事件になってしまいましたが、
こんなドラマを生む囲碁の曖昧なルール、
なくなっていって嬉しいような、悲しいような・・・
この時は私もバツが悪かったので、きっと、いいことですね^^